メアリ・リード

メアリ・リード：伝説の女海賊、その生涯と航海

メアリ・リード（Mary Read、1685年頃? - 1721年4月28日）は、18世紀のカリブ海で名を馳せた海賊です。彼女は男装をして海賊行為に手を染め、アン・ボニーと共に、その名を歴史に刻みました。

生い立ちと男装の理由

メアリは1685年頃、イングランドで生まれたとされています。彼女の母親は、夫である船乗りが航海で行方不明になった後、経済的な困窮に苦しんでいました。その後、再び妊娠した母親は、息子を亡くした夫の母親を経済的に頼るため、娘のメアリを男の子として育てることを決意します。これは、亡くなった息子になりすますことで、祖母からの経済的支援を得るためでした。

メアリは祖母に養育されましたが、13歳の時に祖母が亡くなると、裕福なフランス人貴婦人の元に奉公に出されます。その後、軍艦での仕事を得て、船乗りとしての経験を積みました。

軍隊から海賊へ

軍艦を退艦後、メアリはフランドルに渡り、スペイン継承戦争でイギリス軍の騎兵連隊に加わります。そこで出会った同僚と婚約し、結婚後にはブレダ城の近くで「スリー・ホースシューズ」という居酒屋を開業しました。しかし、夫が急死したため、店を畳んでオランダの軍務に戻り、西インド諸島行きの船に乗り込みます。

海賊としての覚醒

西インド諸島へ向かう船が海賊に拿捕されたことで、メアリの運命は大きく変わります。彼女はニュープロビデンス島ナッソーに連行され、そこで海賊として生きることを選びました。ウッズ・ロジャーズ総督に投降した後も、総督がスペインに対して準備した私掠船に乗り組み、反乱を起こしています。この頃、メアリはアン・ボニーと出会い、アンはメアリをハンサムな男性だと勘違いして言い寄ったことが、二人の関係の始まりでした。

1720年8月22日、アンの恋人であるジャック・ラカムは、アンとメアリを含む数人の手下を率いて、ジョン・ハム船長の私掠スループ船ウィリアム号を盗み出します。こうして、ジャック・ラカム船長と2人の女海賊による、悪名高い航海が始まったのです。

男装と戦闘

メアリとアンは、普段は女性の服を着ていましたが、戦闘時には男装していました。ジャマイカで捕虜になった漁師ドロシー・トーマスの証言によれば、彼女たちは「男物の上着とズボンを身に着け、ハンカチを頭に巻き、両手に剣や銃を持ち、男たちに罵詈雑言を浴びせていた」とのことです。また、ドロシーは2人が女性だと気づいた理由として「胸が膨らんでいたから」と述べています。

10月、ラカム一味はジャマイカのネグリル近くで、ジャマイカ総督から海賊討伐の命を受けたジョナサン・バーネット船長の私掠船と遭遇します。戦闘に怖気づいたラカムや男たちが船倉に隠れる中、メアリとアンだけは勇敢に戦いました。メアリはラカムたちを叱咤激励しましたが、彼らが奮起しないのを見ると、船倉に向かって発砲し、一人を殺害したと伝えられています。しかし、メアリとアンの奮闘も虚しく、バーネットはラカムの船を制圧し、一味はポートロイヤルに連行されました。

死と伝説

一味は有罪判決を受け、ラカムたちは絞首刑に処されました。しかし、メアリとアンは妊娠を主張したため、刑の執行は延期されました。当時の法律では、母親の処刑によって胎児の生命を奪うことが禁じられていたためです。しかし、死刑を免れたものの、メアリは獄中で高熱を出し、1721年4月28日に息を引き取りました。彼女の亡骸は、ジャマイカのセントキャサリン教会に埋葬されたと伝えられています。

恋人を救ったエピソード

メアリには海賊船に恋人がいましたが、ある時、その恋人が他の海賊と決闘することになりました。彼女は相手の男が恋人よりも手強いことを危惧し、恋人が臆病者呼ばわりされることを避けるため、自ら相手の男に喧嘩を仕掛け、恋人よりも2時間早く決闘することを約束しました。そして、決闘で相手の急所を一突きにして殺害し、恋人を救ったのです。後の裁判で、メアリの恋人は強制的に海賊船で働かされていたと彼女自身が証言したため、赦免されました。

メアリ・リードは、その大胆不敵な行動と波乱万丈な生涯によって、伝説的な女海賊として語り継がれています。

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