メアリー・マッカリース

メアリー・マッカリース：アイルランドを変革した大統領

メアリー・マッカリース（Mary McAleese）は、1951年6月27日に北アイルランドのベルファストで生まれ、1997年から2011年までアイルランドの第8代大統領を務めました。9人兄弟の長女として育ち、クイーンズ大学ベルファスト校で法律を学び、法廷弁護士としてキャリアをスタートさせました。彼女は、アイルランドが経済的な躍進を遂げる一方で、深刻な経済危機にも直面した時代に大統領を務めました。

経歴と政治的背景

マッカリースは、1975年にダブリン大学トリニティ・カレッジで刑法学教授に就任し、その後、母校であるクイーンズ大学ベルファスト校の研究所理事となりました。また、ジャーナリストやラジオ・テレビのキャスターとしても活躍しました。1997年の大統領選挙では、統一アイルランド党から立候補し、与党労働党を破って当選しました。この選挙では、前任のメアリー・ロビンソン大統領の高い人気を背景に、主要政党から複数の女性候補者が出馬しました。同年11月11日、マッカリースはロビンソン前大統領の後を継いで第8代大統領に就任しました。彼女は、紛争地域である北アイルランド出身者として初めてのアイルランド大統領となりました。

アイルランドの大統領の任期は7年であり、マッカリースは2004年9月14日に2期目への立候補を表明し、対立候補がいなかったため、10月1日に再選が確定しました。そして、11月11日に正式に2期目の大統領に就任しました。

「ケルトの奇跡」と経済危機

マッカリース大統領の1期目の任期中、アイルランドは「ケルトの奇跡」と呼ばれる目覚ましい経済成長を遂げました。1973年に欧州共同体（EC）に加盟していましたが、1992年から1993年にかけて調印されたマーストリヒト条約により、欧州連合（EU）域内での投資が活発化しました。さらに、1997年以降はITブームに乗り、アイルランドの低い労働コスト、土地価格、税制を求めて、米国からの直接投資や本社移転が相次ぎました。2000年には経済成長率が10.7％を記録し、米国でインターネット・バブルが崩壊した2001年でも6％台を維持しました。これにより、賃金や地価が上昇し、一人当たり国民所得も21,000ドルを超えました。アイルランドは、長らくイギリスの植民地支配に苦しめられた「貧しいカトリック農民の国」というイメージから、現代的なIT立国へと変貌を遂げました。

しかし、2008年のリーマンショック以降、アイルランド経済は深刻な危機に陥りました。不動産バブルの崩壊、銀行の破綻、そして政府の債務危機が重なり、アイルランドはEUと国際通貨基金（IMF）による金融支援を受けざるを得なくなりました。マッカリース大統領は、この困難な時期に国家の象徴として、国民を励まし、団結を呼びかけました。

その他の活動

2003年11月、マッカリースはハルビン工業大学から名誉博士号を授与されました。2005年3月には非公式に日本を訪問し、3月16日には東京大学で講演を行いました。

メアリー・マッカリースは、アイルランドの歴史において、経済的な繁栄と苦難の両方を経験した時代を率いた重要な人物として記憶されています。彼女のリーダーシップは、アイルランド国民に希望と勇気を与え、国家の団結を促進しました。

アイルランド大統領府公式サイト（英語）
アイルランド大統領二期目へ（BBC News）（英語）
メアリー・マッカリースの東京大学での講演の様子

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