メイキング・ムーヴィーズ

『メイキング・ムーヴィーズ』（Making Movies）は、1980年にイギリスのロック・バンド、ダイアー・ストレイツによってリリースされた3枚目のスタジオ・アルバムです。この作品は、バンドが結成以来初めてとなるメンバー変更を経験した後に発表されました。

制作背景

本作のレコーディング・セッションは1980年7月に始まりましたが、その途中で、ギタリストであり中心人物であるマーク・ノップラーの弟、デヴィッド・ノップラーがバンドを離れるという出来事がありました。デヴィッドは後にこの時の状況を振り返り、「私が辞めることになったのは、もはやマークと私が同じバンドで活動することが難しくなっていたからだ。スタジオでは、互いに目を合わせずに歩いていたよ」と、兄弟間の関係性の悪化が脱退の要因であったことを示唆しています。しかし、完全な断絶ではなかったようで、デヴィッドが1983年に発表した初のソロ・アルバム『Release』には、マークとベーシストのジョン・イルズリーがゲストとして参加しています。
また、アルバム制作には、当時ブルース・スプリングスティーン率いるEストリート・バンドのメンバーであったキーボード奏者、ロイ・ビタンがアディショナル・ミュージシャンとして参加し、その演奏がアルバムに彩りを加えています。
アルバムリリース後のツアーには、新たなギタリストとしてハル・リンデス、そしてキーボード奏者としてアラン・クラークが加わり、ダイアー・ストレイツは5人編成で活動を続けることとなりました。

商業的成功

『メイキング・ムーヴィーズ』は世界各国で大きな商業的成功を収めました。特にイギリスでは、全英アルバムチャートで最高4位に達し、なんと251週にわたってチャート圏内に留まるという驚異的なロングヒットとなりました。シングルカットされた楽曲も好評を博し、「ロミオとジュリエット」は全英シングルチャートで8位を記録したほか、「メイキング・ムーヴィー（Skateaway）」が37位、「トンネル・オブ・ラヴ」が54位にランクインしました。
アメリカにおいても、Billboard 200で最高19位を獲得し、1981年4月にはRIAAよりゴールドディスクに認定、さらに2001年7月にはプラチナディスク認定を受けるなど、長期にわたる支持を得ました。また、「メイキング・ムーヴィー（Skateaway）」はBillboard Hot 100で58位にチャートインしています。
ヨーロッパやオセアニアでも成功を収めており、ノルウェーのアルバム・チャートでは18週連続でトップ10入りし、うち2週は首位を獲得しました。ニュージーランドのアルバム・チャートでも最高3位を記録し、1980年12月7日から1983年7月10日までの約2年半にわたり連続でトップ50にランクインするなど、こちらも特筆すべきロングヒットとなっています。

批評的評価

本作は音楽評論家からも概ね高い評価を受けています。オールミュージックのStephen Thomas Erlewineは、5点満点中4.5点を付け、「アルバムの締めくくりである「Les Boys」でやや勢いを失っている部分はあるにせよ、全体として『メイキング・ムーヴィーズ』はバンドの最高傑作に位置付けられる」と賛辞を送っています。
また、『ローリング・ストーン』誌が選出した「1980年代のベスト・アルバム100」リストでは、52位にランクインするなど、その後の音楽シーンにおいても重要な作品として認識されています。

収録曲と参加ミュージシャン

アルバムは以下の7曲で構成されています。特記なき楽曲はマーク・ノップラーによって書かれています。

トンネル・オブ・ラヴ "Tunnel of Love" (Mark Knopfler, Richard Rodgers, Oscar Hammerstein II) – 8:11
ロミオとジュリエット "Romeo and Juliet" – 6:01
メイキング・ムーヴィー "Skateaway" – 6:40
エクスプレッソ・ラヴ "Expresso Love" – 5:12
ハンド・イン・ハンド "Hand in Hand" – 4:48
ソリッド・ロック "Solid Rock" – 3:27
男達は… "Les Boys" – 4:08

本作に参加した主なミュージシャンは以下の通りです。

マーク・ノップラー - ボーカル、ギター
ジョン・イルズリー - ベース、バックグラウンド・ボーカル
ピック・ウィザース - ドラムス

アディショナル・ミュージシャンとして、ロイ・ビタン（キーボード）が名を連ねています。

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