メイソン＝ディクソン線

メイソン＝ディクソン線の概要

メイソン＝ディクソン線（Mason-Dixon Line）は、アメリカ合衆国のペンシルベニア州、デラウェア州とメリーランド州、ウェストバージニア州を隔てる重要な境界線です。この線は、1763年から1767年にかけて測量が行われたもので、測量士のチャールズ・メイソンとジェレマイア・ディクソンの名に由来します。この境界線は、アメリカ合衆国の北部と南部を象徴するものとして広く認識されています。

歴史的背景

メイソン＝ディクソン線の形成には、ペンシルベニア植民地とメリーランド植民地との間の長い争いが関与しています。1732年には、当時のメリーランド植民地の領主であった第5代ボルティモア男爵チャールズ・カルバートが、ウィリアム・ペンの息子との間で境界線を引く合意文書に署名しましたが、後にボルティモア卿はこの合意を拒否し、両植民地の間で暴力的な対立が激化しました。これがクレサップ戦争と呼ばれる事件です。

この争いは1760年になって、イギリス国王による仲裁によってようやく解決を見ました。その後、ペン家とカルバート家はメイソンとディクソンに境界線の測定を依頼し、結果として新たな境界が確定しました。

1781年には、ペンシルベニア州が奴隷制を廃止し、これがメイソン＝ディクソン線の重要性をさらに増すことになりました。この線は、奴隷州と自由州の境界を示すものとしても機能し、アメリカの南北戦争にも影響を与えました。

地理的な特徴

メイソンとディクソンによる測量は、フィラデルフィアの南から始まり、デラウェア川からウェストバージニア州との州境に至るまでの範囲で行われました。その結果、デラウェアとペンシルベニア、更にはデラウェアとメリーランドの境界も確定されました。

デラウェアとペンシルベニアの境界は、円弧状の線として知られ、特に「12マイル円」と呼ばれる部分が存在します。また、デラウェアとメリーランドの境界は、ほぼ南北に走りますが、計測の目的に応じて正確な南北線とは異なる形状をしています。

メリーランドとペンシルベニアの境界は、北緯39度43分20秒に沿って走っており、実際には直線とは言えない構造を持つ曲線です。このため、設置された標識の位置は数メートルの幅で変動しています。

メイソン＝ディクソン線には1マイルごとに石の標識が設置され、5マイルごとにはさらに特別な石の標識が配置されています。「クラウンストーン」と呼ばれるこれらの標識には、イギリスから運ばれたもので、メリーランド側には「M」、ペンシルベニア及びデラウェア側には「P」が刻まれています。これらの標識は、現在も大部分が保存されており、多くは柵や屋根で保護されています。

多くのアメリカの文献や文化作品においても、メイソン＝ディクソン線は重要なテーマとして取り上げられています。アメリカ文学や音楽において、この線はしばしば南北の対立を象徴するものとして描かれています。

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