メガスター

メガスターとは

メガスター（MEGASTAR）は、日本の機械工学技術者でありプラネタリウム開発製作者である大平貴之氏によって1998年に開発された、レンズ式移動型プラネタリウムのシリーズ名称です。大平氏が学生時代から開発を続けてきたプラネタリウムの集大成とも言えるこのシリーズは、従来のプラネタリウムの概念を覆す革新的な技術と、圧倒的な星の投影数を誇ります。

シリーズ展開

MEGASTAR

大平氏が開発した4番目のプラネタリウムであり、1991年に発表した「アストロライナー」の後継機として、1998年に「アストロライナー2」として国際プラネタリウム協会で初公開されました。当初は170万個の星を投影可能でしたが、その後の改良により410万個まで増加しました。この投影性能は、当時のプラネタリウムの数百倍に相当します。また、移動時の分解が必要だったアストロライナーの反省から、移動・設営・撤収が容易な小型軽量のモバイルプラネタリウムをコンセプトに開発されました。その結果、恒星球の直径46センチメートル、重量30キログラム未満と大幅な小型軽量化を実現しています。当時会社員であった大平氏は、この開発を個人で進めていました。2000年には国内初上映が行われ、各地で移動式エアドームと併用して上映されました。

最大の特徴は、天の川の再現方法です。従来は補助的な光で表現されていた天の川を、メガスターでは肉眼では確認できない暗い星まで投影することで、恒星の光のみで再現しています。双眼鏡で見ると、暗い恒星が寄り集まっている様子が確認できます。恒星原板の作成には、ヒッパルコス衛星のデータを基に、CNCレーザーでフォトレジストに露光する装置を独自に開発しました。この装置の開発により、多数の恒星の正確な座標の投影が可能となりました。

当初は、太陽と惑星の投影機も搭載されていましたが、現在はデジタル投影装置に取って代わられています。また、小型ながら夕焼け・朝焼け投影機も備えています。当時のプラネタリウムでは数千個、最新鋭でも数万個の星しか表現できなかったことを考えると、メガスターの星の数と大きさは桁外れであり、個人で開発したことは驚異的です。このメガスターの登場は、プラネタリウムの高性能化を大きく進めるブレイクスルーとなりました。

MEGASTAR-II

2003年に公開されたメガスターの後継機です。1号機フェニックスは410万個（12.5等級まで）の星を投影可能です。メガスターIIの公開に合わせて大平氏はソニーを退社し、2005年に自身の会社である大平技研を設立しました。1号機フェニックスは川崎市青少年科学館で常設展示され、その後2号機ミネルバに置換されました。3号機コスモスは日本科学未来館に常設展示され、当時世界最多の恒星投影数でした。4号機タイタンは移動公演用に使用されました。本体形状は繭型となり、やや大型化しましたが、移動に支障のないサイズです。惑星投影機能は持たないものの、3号機コスモスには惑星投影機が設置されています。4号機タイタンにはデジタルプラネタリウムとの連動機能が搭載され、より多彩な投影が可能になりました。

2009年には、業務筋向けに大型ドーム用のメガスターIIAと中型ドーム用のメガスターIIBが発表され、デジタル式プラネタリウムとの連携が可能になりました。これらは、神奈川工科大学厚木市子ども科学館や山梨県立科学館をはじめ、国内外の施設に導入されています。

Super MEGASTAR-II

2008年に発表された、メガスターシリーズのフラッグシップモデルです。恒星投影数は2,200万個（13等級まで）に拡大され、当時世界一の投影数を誇りました。デジタルプラネタリウムと自動的に連動する「オートジオメトリ」機能を初めて搭載し、高精細な星空とデジタル映像を融合させた演出が可能になりました。千葉県立現代産業科学館での公開時には、連日徹夜組が出るほどの盛況ぶりでした。

MEGASTAR-III FUSION

光学式投影機と高解像度デジタル投影システムを融合させた、大平技研独自の「FUSIONモード」に対応したフラッグシップ機です。従来の光学モードに加え、FUSIONモードでは、光学式で3等級までの135個の恒星を投影し、それより暗い星はデジタル投影システムで再現します。FUSIONモードでは、すべての恒星を個別にオンオフ可能で、星の色や瞬きを完全再現する世界初の機能を備えています。2012年に川崎市青少年科学館に導入されました。光学モードでは1500万個の恒星を投影し、光学式投影機にはソリッドステートシャッターが備えられています。

MEGASTAR-Neo

業務用の超小型光学式プラネタリウムです。球体部の直径は32センチメートル、総重量は約33キログラムで、2つに分割可能です。投影恒星数は標準100万個（1号機は500万個）。2018年に1号機が石川県金沢市の銀河の里キゴ山に納入されました。

MEGASTAR-ZERO

一般向けに開発された小型プラネタリウムです。直径27センチメートル、重量11キログラムとシリーズ最小・最軽量ですが、恒星投影数は220万個（12等級まで）です。業務用プラネタリウムとしては世界で初めて光源に超高輝度白色LEDを使用しており、電力消費や発熱を抑え、メンテナンスフリー化を実現しています。

メガスターシリーズは、その革新的な技術と圧倒的な星の投影数で、プラネタリウムの世界に大きな影響を与え続けています。

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