メキシコの祭り

メキシコの祭り

『メキシコの祭り』（原題：La Fiesta Mexicana, A Mexican Folk Song Symphony for Concert Band）は、アメリカ合衆国の作曲家H・オーエン・リード（H. Owen Reed, 1910-2014）が1949年に完成させた、吹奏楽のための交響曲です。後に作曲者自身によって管弦楽版も編曲されました。

作曲背景

この作品は、リードがグッゲンハイム財団の奨学金を得て、1948年から1949年にかけて約5ヶ月間メキシコに滞在し、現地の民族音楽を研究した成果として生まれました。特に、メキシコ西部のハリスコ州、グアダラハラやチャパラといった地域で蒐集した民謡や伝統的な音楽素材が、楽曲の核となっています。

楽曲構成

本作は伝統的な3楽章構成で、各楽章はそれぞれ異なるメキシコの情景や音楽文化を描いています。

第1楽章：プレリュードとアズテック・ダンス（Prelude and Aztec Dance）

演奏時間：約9分45秒

闘牛場の賑わいを思わせる音楽と、グアダラハラの音楽学者によって採譜されたアステカ族の舞曲「アズテック・ダンス」が融合しています。特に、闘牛場の雰囲気を再現するために、ステージ外（オフステージ）で演奏されるバンダ（ブラスバンド）が用いられる点が特徴的です。

第2楽章：ミサ（Mass）

演奏時間：約6分31秒

チャパラの聖堂で耳にしたグレゴリオ聖歌、具体的にはリベル・ウズアリス（Liber Usualis）に収められた「アレルヤ、われら星を見たり」（Alleluia, Vidimus Stellam）の旋律が取り入れられています。静謐かつ厳粛な雰囲気の中に、メキシコの宗教的な一面が表現されています。

第3楽章：カーニヴァル（Carnival）

演奏時間：約6分13秒

ハリスコ州のマリアッチによって演奏される、活気あふれる民謡「エル・ソン・デ・ラ・ネグラ」（El Son de la Negra）が主要な素材として用いられています。祭りの熱狂や陽気な踊りが描かれ、楽曲全体を華やかに締めくくります。

編成

吹奏楽版は、一般的な吹奏楽編成に加え、低音木管楽器が多用され、またマリアッチの音楽でも使用されるハープが加えられています。さらに、第1楽章ではオフステージのバンダが必要となります。

管弦楽版は、1964年にデトロイト交響楽団の委嘱を受け、リード自身が編曲しました。

総演奏時間は約22分から23分です。

献呈

本作は、リードがグッゲンハイム奨学金を得る際に推薦状を書き、また吹奏楽版の世界初演の指揮も務めたウィリアム・サンテルマン少佐（当時）に献呈されています。

楽譜出版

楽譜は、1954年にアメリカのミルズ・ミュージックが版権を取得し、1957年にベルウィン・ミルズから出版されました。その後、出版社の合併などを経てワーナー・ブロスが出版し、現在はアルフレッド社が出版・販売を行っています（管弦楽版はレンタル対応）。

初演情報

吹奏楽版世界初演
日時：1950年2月26日
場所：アメリカ、メリーランド州アナポリス、海軍兵学校ダールグレン・ホール
指揮：ウィリアム・F・サンテルマン
演奏：アメリカ海兵隊軍楽隊

吹奏楽版日本初演
日時：1961年7月6日
場所：東京都、杉並公会堂
指揮：大橋幸夫
演奏：国立音楽大学ブラスオルケスター

管弦楽版初演
日時：1965年4月8日
場所：アメリカ、デトロイト
指揮：シクステン・エールリンク
演奏：デトロイト交響楽団

管弦楽版日本初演
日時：2015年11月8日
場所：静岡市、グランシップ
指揮：中原朋哉
演奏：シンフォニエッタ静岡

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