メキシコシティの戦い

メキシコシティの戦い：米墨戦争のクライマックス

メキシコシティの戦い（1847年9月8日～15日）は、米墨戦争における重要な転換点であり、メキシコシティの陥落という結果で幕を閉じました。アメリカ軍のメキシコ侵攻における最終目標はメキシコシティの占領であり、この戦いはその最終局面を飾る一連の戦闘として位置付けられます。

戦いの背景

アメリカ軍は、3月のベラクルス陥落を足掛かりに、ウィンフィールド・スコット将軍率いる部隊が内陸へと進軍しました。セルロ・ゴードの戦い、チュルブスコの戦いでメキシコ軍を撃破し、メキシコシティまでわずか8キロメートルに迫っていました。

しかし、アントニオ・ロペス・デ・サンタ・アナ将軍率いるメキシコ軍は、幾度かの敗北にも関わらず、依然として相当な戦力を保有しており、アメリカ軍を迎え撃つ準備を整えていました。メキシコシティ防衛のため、サンタ・アナはチャプルテペク城などの要塞を巧みに利用した防衛線を構築していました。

戦闘の展開

モリノ・デル・レイの戦い

9月8日、メキシコシティ郊外にあるモリノ・デル・レイ（王の工場）を巡り戦闘が勃発しました。アメリカ軍は、この地にあると推測された大砲鋳造所の破壊を企図しましたが、戦闘は予想以上に激しく、両軍に大きな損失が出ました。アメリカ軍はこの戦闘で明確な軍事的な利益を得ることはできませんでした。この戦いは、スコット将軍とワース将軍の間にあった不和を更に深める結果にもなりました。

チャプルテペクの戦い

メキシコシティへの主力攻撃は9月12日に開始されました。当時、メキシコ軍士官学校として使われていたチャプルテペク城は、メキシコシティ防衛の要衝として機能していました。アメリカ軍は徹底した砲撃の後、9月13日に歩兵による攻撃を行い、城を陥落させました。この戦闘で戦死した士官候補生たちは「ロス・ニーニョス・エロエス（英雄的士官候補生）」として後世に語り継がれています。

サン・コスメ門とベレン門への攻撃

チャプルテペク城陥落後、アメリカ軍はサン・コスメ門とベレン門への攻撃を開始しました。両門とも激しい抵抗にあいましたが、最終的にはアメリカ軍が突破しました。この戦闘で、後のアメリカ合衆国大統領となるユリシーズ・S・グラント中尉は、教会の鐘楼から大砲を運用し、アメリカ軍の勝利に貢献しました。

メキシコシティの陥落

メキシコ軍は、アメリカ軍の猛攻の前にメキシコシティからの撤退を余儀なくされました。アメリカ軍は、抵抗がほとんど無いままメキシコシティへ進撃し、9月14日にはメキシコシティを完全に占領しました。サンタ・アナ将軍は事前に市内に多数の囚人を放っていたため、市街戦でアメリカ軍は予想外の抵抗に遭うことになります。しかし、アメリカ軍はこれらの抵抗も克服し、メキシコシティを制圧しました。

戦力と損失

この戦いでは、アメリカ軍とメキシコ軍双方に多大な損失が出ました。アメリカ軍は、合計で約1651名の死傷者を出しました。メキシコ軍の死傷者数はさらに多く、約5323名にのぼると推定されています。

戦いの影響

メキシコシティの戦いは、米墨戦争の終結を決定づける重要な出来事でした。この戦いの後、メキシコは事実上降伏し、1848年2月2日にグアダルーペ・イダルゴ条約が締結され、戦争は終結しました。メキシコはアメリカ合衆国に広大な領土を割譲することになり、米墨戦争におけるアメリカ合衆国の勝利は、アメリカの西進政策を加速させることになりました。メキシコシティの戦いは、アメリカ合衆国の軍事力と戦略の優位性を示すものとなりましたが、同時に、多くの犠牲を伴った激戦でもありました。

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