セルロ・ゴードの戦い

セルロ・ゴードの戦い：米墨戦争の転換点

1847年、米墨戦争の激戦地として知られるセルロ・ゴードで、アメリカ軍とメキシコ軍の運命を決する戦いが繰り広げられました。メキシコシティを目指したアメリカ軍の進軍を阻むべく、サンタ・アナ将軍率いるメキシコ軍は、ハラパ近郊のセルロ・ゴード峡谷に強固な防御陣地を築いていました。サンタ・アナ将軍は、精鋭12,000名以上の兵士を配置し、アメリカ軍の進撃を待ち構えていました。

一方、アメリカ軍はウィンフィールド・スコット将軍の指揮の下、メキシコシティ攻略に向けた進軍を続けていました。この戦略上の要衝を突破するため、スコット将軍は、アメリカ陸軍工兵司令部のリー大尉が発見した、メキシコ軍の防御線を迂回できる山道に着目します。この戦略的発見は、戦いの帰趨を大きく左右することになるのです。

1847年4月18日、アメリカ軍はリー大尉が発見した山道を経て、メキシコ軍の側面に攻撃を仕掛けました。予想外の攻撃にメキシコ軍は混乱に陥り、激しい戦闘が展開されます。アメリカ軍はメキシコ軍の防御陣地を突破し、サンタ・アナ軍は壊走を余儀なくされました。

この戦闘におけるメキシコ軍の損失は甚大で、1,000名以上の戦死者、3,000名以上の捕虜を出しました。一方、アメリカ軍の損失は戦死63名、負傷367名と、メキシコ軍に比べればはるかに少なかったのです。サンタ・アナ将軍自身も、戦闘中に不意を突かれ、義足を失いながらも馬で逃亡を余儀なくされました。彼の失われた義足は後にイリノイ州で発見され、現在も展示されているとのことです。

このセルロ・ゴードの戦いは、その地形的特徴から「西のテルモピレー」とも呼ばれています。古代ギリシャのテルモピレーの戦いでは、少数精鋭のギリシャ軍が圧倒的な数のペルシア軍を相手に善戦しましたが、セルロ・ゴードでは、アメリカ軍がメキシコ軍を圧倒的な差で破った点が対照的です。

特筆すべきは、メキシコ軍の中でも聖パトリック大隊がアメリカ軍に対して最後まで抵抗を続けたことです。彼らはアメリカ軍への捕虜となることを極端に恐れており、退却しようとするメキシコ兵に発砲するなど、激しい抵抗を見せました。しかし、激しい砲撃の前に、彼らの抵抗も限界に達したのです。

セルロ・ゴードの戦いの勝利によって、アメリカ軍はメキシコシティへの進軍を大きく前進させました。スコット将軍は、プエブラまで進軍し、その後メキシコシティを目指して進軍を続けました。この戦いは、米墨戦争の戦局を大きく変える転換点となり、アメリカ軍のメキシコシティ制圧へと繋がっていくのです。

さらに、この戦いは、後に南北戦争で将軍として活躍する数々の軍人を輩出したことでも知られています。スコット将軍率いるアメリカ軍の工兵隊には、ロバート・E・リー、ジョージ・マクレラン、ジョセフ・ジョンストン、ジョン・G・フォスター、P・G・T・ボーリガードといった、後の南北戦争を代表する人物が名を連ねていたのです。

セルロ・ゴードの戦いは、米墨戦争のみならず、アメリカ合衆国史、そして軍事史においても重要な位置を占める戦闘であったと言えるでしょう。その戦いの舞台となった地名は、現在もアメリカ各地に残っており、歴史を後世に伝える重要な証となっています。

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