メタコメット

メタコメット（Metacomet）

メタコメットは1639年に生まれ、1676年8月12日に亡くなったアメリカ・インディアンのワンパノアグ族の酋長です。白人社会では「フィリップ王」という名で知られています。この名前は、古代マケドニアの王ピリッポス2世に由来しており、特に彼の兄弟であるワムスッタも同様にアレクサンダーと呼ばれることで、マケドニアの偉大な王たちを称えていることがわかります。しかし、メタコメットは単純な国家の指導者ではなく、彼の役割は合議制の下での調停者としてのものであり、白人たちが想像するような「王」ではありませんでした。

人物としてのメタコメット

メタコメットは、ワンパノアグ族の伝説的な酋長マサソイトの次男です。彼は1621年にピルグリムファーザーズと友好関係を築き、彼らに食糧を供給するなど、さまざまな面で重要な役割を果たしてきました。メタコメットは、このような背景からも、非常に人間的で協力的な性格を持った人物であったことが伺えます。

ワンパノアグ族の新しい酋長となった際、メタコメットは兄ワムスッタの後を引き継ぎました。ワムスッタは新たな土地の譲渡に不満を持っており、入植地の拡大に苦慮していました。彼は白人側との交渉中に謎の死を遂げ、これがメタコメットを酋長としての道へ導くことになります。

フィリップ王戦争の背景

フィリップ王戦争は、1675年に始まりました。そのきっかけは、白人入植者たちによる土地の拡張と、それに対するインディアンたちの反発でした。ワンパノアグ族は、他の部族と協力し、白人入植者の進出に立ち向かうことを決定します。この時、メタコメットは合議によって戦争を決定した部族の合意を受けて行動しました。

1674年12月、キリスト教に改宗したワンパノアグ族のジョン・ササモンが白人に告げ口をし、メタコメットの意図を白人側に知らせました。この情報は戦争の引き金となり、メタコメットは入植地への攻撃を開始しました。それに対抗する形で白人入植者たちは軍事行動を起こします。メタコメットは部族の合議に基づいた行動者に過ぎず、個人としての戦争の指導者ではありませんでしたが、白人たちからは彼が戦争を率いる「司令官」とみなされました。

戦争の終結

しかしながら、戦争は1676年8月12日にメタコメットが戦死することで終わりました。彼の死は、白人側の勝利を決定づけるものであり、彼の遺体は蛮行の標的となりました。メタコメットの首は槍の先に刺され、白人の村に展示され、その姿は20年以上にわたり見せしめとしてさらされました。また、彼の家族は捕虜としてバミューダ諸島に送られ、奴隷としての過酷な運命を背負うことになります。

この歴史的背景からも分かるように、メタコメットは決して単独で戦争を引き起こしたわけではなく、彼を取り巻く社会的状況と部族の合議があっての出来事でした。そのため、彼の真の姿を理解するには、その時代の背景を冷静に見ることが必要です。

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