ワンパノアグ

ワンパノアグ族の概要

ワンパノアグ族（英語：Wampanoag、マサチューセット語：Wôpanâak）は、アメリカ合衆国のニューイングランド地域、特にマサチューセッツ州南東部で暮らすインディアン部族です。この族名は「東の民」または「夜明けの民」を意味し、主に50以上の支族から成り立っています。彼らはアルゴンキン語族に属し、かつては南東マサチューセッツ州からロードアイランド州に広がる土地を支配していました。

伝統的な生活様式

ワンパノアグ族は、主に狩猟や漁業、耕作を行いながら生活していました。彼らの住居は「ウィグワム」と呼ばれるドーム型の小屋で、自然環境に適応した形で形成されていました。彼らの生活は植物と動物との相互関係から成り立っており、彼らの文化には強い自然観が反映されています。

イギリス入植者との関係

1620年、ピューリタンの一団であるピルグリム・ファーザーズがメイフラワー号に乗ってアメリカに到着し、プリマス植民地を築きました。しかし、彼らは新しい環境に不安を抱え、冬の間に多くの者が死亡しました。困難な状況に直面した彼らのもとへ、アベナキ族の酋長サモセットが彼らと連絡を取り、通訳の役割を果たすワンパノアグ族のティスクアンタム（スクアント）を連れて戻りました。スクアントは彼自身がイギリス人に捕らえられた経験があるため、彼らの文化や農業の技術を教え、入植者のサバイバルを助けました。これにより、1621年には両者の間で友情の条約が結ばれ、お互いの協力関係が形成されることとなりました。

この条約は、土地の譲渡を含み、ワンパノアグ族の酋長マサソイトは、入植者との間に形成された友好関係が族の存続に寄与すると期待していたとされています。しかし、土地の概念が異なるため、この譲渡の実質的な意味合いは部族側には理解されていなかった可能性があります。

その後、1621年の収穫の季節には、ワンパノアグ族と入植者との間で感謝祭が開催されました。これは、現在の感謝祭の起源とされており、すべてのものを共有する文化が強調されていました。

入植者の裏切りとフィリップ王戦争

しかし、時間が経つにつれ、入植者とワンパノアグ族の関係は次第に悪化していきました。1675年から1676年にかけて、ワンパノアグ族の酋長メタコメット（メタコム）は、入植者が土地を侵略し、族を迫害し続けていることに抗議しました。しかし、これらの抗議は無視され、ワンパノアグ族は満を持してプリマス入植地へ攻撃を行いました。この戦争は「フィリップ王戦争」と呼ばれ、同盟を結んだ他のインディアン部族も参戦しました。

この戦争により、近隣の部族との連携をもって抵抗するも、最終的には入植者側の武器と兵力に圧倒される形となり、結果として多くのワンパノアグ族が命を落としました。メタコメット自身も殺され、その遺体は残虐に扱われました。戦争の結果、ワンパノアグ族の人口は激減し、約5000人いたとされる部族は、わずか400人にまで減少しました。

現在のワンパノアグ族

21世紀初頭の人口調査ではワンパノアグ族の人数は2336人にまで回復していますが、他の部族のインディアンや白人、黒人との混血者が多くを占めています。ワンパノアグ族は、ニューイングランド圏におけるインディアンの文化のハブとして活動しており、特にマーサズ・ヴィニヤード島やケープコッドに保留地を持っています。

毎年、彼らは「全米哀悼の日」を行い、「ピルグリムファーザーズの上陸記念感謝祭」とは対照的に、自らの歴史を振り返り、虐殺の現実を忘れないよう対抗の意を示しています。この運動は1970年にワムスッタ・フランク・ジェームズによって開始され、彼の死後も毎年継続されています。彼らの活動は、インディアンの視点から歴史を再考するための重要な機会を提供しています。

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