メタデータ (共通言語基盤)

メタデータとは

メタデータは、共通言語基盤（CLI）において、共通中間言語（CIL）コードに関する情報を記録したデータです。具体的には、.NET Framework言語のコンパイラが、CILコードを含むアセンブリを生成する際に、そのアセンブリに関する情報をメタデータとして保存します。

このメタデータには、アセンブリに含まれる全てのクラス、クラスメンバ（フィールド、メソッド、プロパティなど）、さらにそのアセンブリが参照する他のアセンブリのクラスやメンバに関する詳細な情報が含まれています。例えば、メソッドのメタデータには、そのメソッドが属するクラス、戻り値の型、パラメータの型、アクセス修飾子など、メソッドに関するあらゆる情報が記録されます。

共通言語ランタイム（CLR）がCILコードを実行する際には、このメタデータが重要な役割を果たします。CLRは、メソッドの呼び出し時に、呼び出し元のメタデータと呼び出し先のメタデータを比較し、パラメータや戻り値の型が完全に一致しているかをチェックします。これにより、型安全性が保証され、実行時エラーを未然に防ぐことが可能になります。

属性によるメタデータの付加

開発者は、コードに「属性」という形でメタデータを付加することができます。属性は、クラス、メソッド、フィールドなど、様々なコード要素に対して適用可能です。属性には、CLRが認識できる「擬似カスタム属性」と、開発者が独自に定義できる「カスタム属性」の2種類があります。

属性をコードに記述すると、コンパイラはその属性情報をメタデータに書き込みます。擬似カスタム属性は、例えば `[Serializable]` のように、クラスのインスタンスがシリアライズ可能であることを示すなど、CLRによって解釈される特殊な属性です。C#では以下のように記述します。

csharp
[Serializable]
public class MyClass
{
...
}


一方、カスタム属性は、CLRではなく、アプリケーションやツールが解釈する属性です。例えば、Visual Studioのプロパティウィンドウでオブジェクトのプロパティをカテゴリ分けして表示する機能は、`[Category]` というカスタム属性によって実現されています。この場合、CLRは `[Category]` 属性を解釈せず、Visual Studioがメタデータを読み取って、プロパティをカテゴリごとに表示しています。

開発者は、カスタム属性を定義することで、独自のメタデータをコードに付加し、それをリフレクションを使って読み取って利用することができます。

リフレクションによるメタデータの読み取り

リフレクションは、メタデータを読み取るためのAPIです。リフレクションを使用することで、実行時にクラスやクラスメンバに関する情報を取得したり、メソッドを動的に実行したりすることができます。具体的には、クラスの名前、メソッドの名前、パラメータの型、フィールドの値などを取得したり、メソッドを呼び出したりすることが可能です。

.NET Framework 2.0以降では、リフレクションを使用してメソッドのCILコードを取得することもできるようになりました。これにより、コードを動的に解析したり、変更したりする高度な操作も可能になります。

リフレクションは、デバッグツール、テストツール、プラグインシステムなど、様々な場面で利用されます。例えば、デバッガはリフレクションを使用して、オブジェクトの内部構造を表示したり、変数の値を監視したりします。また、プラグインシステムでは、リフレクションを使って、動的にプラグインをロードしたり、実行したりします。

このように、メタデータは.NET Frameworkにおいて、型安全性の確保、リフレクションによる動的な操作、属性による拡張性の実現など、様々な役割を果たしており、開発者にとって非常に重要な要素です。

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