メタルギア (架空の兵器)

メタルギア

コナミ（現：コナミデジタルエンタテインメント）が手がける人気アクションゲームシリーズ、『メタルギア』に登場する架空の大型兵器群の総称です。当初は核弾頭を搭載し、二足歩行によって困難な地形をも踏破、従来の固定施設に縛られない核攻撃能力を持つ「核搭載二足歩行型戦車」を指していました。しかし、シリーズの歴史が進むにつれてその定義は広がり、核兵器運用を想定しない機種や、無人戦闘兵器、さらには支援用の小型ロボットまで多様な形態が登場し、兵器としての概念そのものも変化していきました。本項では、シリーズに登場する主要なメタルギア及び関連する兵器について記述します。

概要

メタルギアの基本的な設計思想は、単独での作戦遂行能力を持ち、場所を選ばずに核ミサイルを発射可能であるという点にあります。この機動性を活かした核兵器の運用は、全世界の核戦略や軍事バランスに劇的な影響を与えうるものでした。核ミサイル以外にも、自己防衛や攻撃のための様々な補助兵器を装備しています。開発当初は核弾頭搭載型大陸間弾道ミサイル（ICBM）の移動式発射プラットフォームとしての役割が重視されていましたが、機種や開発された時代によってその具体的な運用目的には違いが見られます。

特に『メタルギアソリッド4』以降の近未来では、国家間の大規模衝突よりも、経済活動を目的とした代理戦争や非対称戦争へと戦争の形態が変遷しました。これにより、従来の核抑止を主眼とした戦略兵器としてのメタルギアの意義は薄れ、小型化や、無人戦闘車両・歩兵に代わる存在としての派生が進みます。ついには、戦闘能力を持たない小型の二足歩行サポートロボット（メタルギアMk.II/III）が「メタルギア」の名を冠して登場するなど、「メタルギア＝兵器」という従来の図式すら崩壊しつつあります。さらに『メタルギア ライジング リベンジェンス』の時代では、サイボーグ技術の発展が著しく、かつてメタルギアが担っていた「兵器と歩兵をつなぐ」役割はサイボーグが代替するようになり、無人兵器として派生したメタルギアの需要も低下傾向にあります。このように、『メタルギアソリッド3』（1964年）から『メタルギア ライジング リベンジェンス』（2018年）までのシリーズの歴史は、奇しくもメタルギアという兵器の誕生、発展、そして衰退の物語を辿る形となっています。

開発経緯

「メタルギア」という兵器の着想は、『メタルギアソリッド3』に登場するソ連の科学者アレクサンドル・レオノヴィッチ・グラーニンによって初めて提唱されました。彼は兵器を「時代を動かす金属の歯車（メタルギア）」と見なし、自らが構想する新型兵器にその名を冠します。しかし、彼の提案した画期的な二足歩行機構は当時の技術では実現が困難であり、開発競争の相手であった、既存技術の応用で完成可能な核搭載型戦車「シャゴホッド」に敗れ、公式には採用されませんでした。当時の軍事専門家からは、二足歩行は車高が上がって標的となりやすく、安定性も低いとして否定的な意見が多数を占めましたが、後にピースウォーカーを開発するヒューイは、山岳や湿地帯といった不整地での踏破能力を高く評価していました。

計画の不採用に不満を募らせたグラーニンは、自らの設計書の有用性を証明するため、アメリカの友人であるヒューイ（Dr.エメリッヒ）にこれを送付します。しかし、この行動がスパイ行為と見なされ、ヴォルギン大佐の拷問によって命を落とすこととなります。皮肉にも、この設計書は同時期に三重スパイであったオセロットによって盗み出され、「賢者達」（後の「愛国者達」）の手に渡るという別のルートでも西側に流れました。当時、アメリカでもヒューイによって二足歩行兵器の草案が発表されていましたが、ヒューイ自身は後に、その内容はグラーニンの設計書の盗用であったことを認めています。

このように、ソ連本国でグラーニンのメタルギアが実機として完成することはありませんでしたが、その設計思想と技術情報は二つの異なる経路で西側へと伝播し、後にアメリカのCIAやビッグ・ボス率いる私設武装組織「国境なき軍隊」（MSF）によって、最初の実機開発へと繋がっていくことになります。

シリーズに登場する主なメタルギア及び関連兵器

小島秀夫監督作品

ピースウォーカー: 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』に登場。厳密には「メタルギア」の名を冠していませんが、核搭載二足歩行型戦車として実質的に最初に開発された機体です。AIによる自動報復を目的とした「完全なる核抑止力」計画の中核を担い、人間の感情を排除した合理的な核報復判断を目指しました。最終的に世界を核戦争寸前に追い込みますが、自らを湖に沈め機能停止しました。核弾頭は後にZEKEに転用されます。
メタルギアZEKE: 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』に登場。シリーズで初めて「メタルギア」の名を冠した機体です。MSFの抑止力として開発され、ピースウォーカーから回収した核弾頭を搭載しました。AI制御による戦術的な行動が可能で、敵AI兵器のパーツを流用するなど、MSFらしい特徴を持ちます。後に海没処分され、その後の消息は不明です。
メタルギアST-84（サヘラントロプス）: 『メタルギアソリッドV ファントムペイン』に登場。初の純ソ連製メタルギアですが、開発にはヒューイが関与しました。グラーニンやREXの系譜を思わせる外観を持ち、直立二足歩行や人型への変形が可能です。劣化ウラン装甲はガンバレル型核爆弾としても機能します。技術的な課題を抱えていましたが、「第三の子供」の超能力による異質な制御で稼働しました。物語の重要な要素となりますが、最終的に破壊されます。
メタルギアTX-55: 『メタルギア』に登場。表舞台の歴史に初めてその姿を現したメタルギアと認識されており、以降の機体の原型となりました。マッドナー博士が開発。核弾頭を搭載し、歩行で目標に接近して小型ミサイルで攻撃するコンセプトにより、メタルギアシリーズの中では最小クラスのサイズです。起動前に破壊されたため、実戦経験はありません。
メタルギア改D: 『メタルギア2 ソリッドスネーク』に登場。TX-55の後継機としてマッドナー博士が開発しました。初めて実戦で起動したメタルギアですが、脚部が脆弱で破壊されました。
メタルギアREX: 『メタルギアソリッド』に登場。核搭載二足歩行戦車として極めて有名で、アメリカ陸軍などにより開発され、オタコンが設計しました。ステルス核弾頭をレールガンで射出するという、従来のミサイル警戒システムでは探知困難な核攻撃能力を持ちます。堅牢な装甲と密閉コクピットを持ちますが、情報収集を依存するレドームが意図的な弱点とされました。シャドー・モセス島事件の核心であり、『メタルギアソリッド4』でも再登場し、対メタルギア兵器であるRAYと激闘を繰り広げました。
メタルギアRAY: 『メタルギアソリッド2』などに登場。シャドー・モセス島事件後、世界中に現れたメタルギアの亜種に対抗するため、アメリカ海兵隊が極秘裏に開発しました。核は搭載せず、対メタルギア戦闘を想定した水陸両用機です。人工筋肉による滑らかな生物的な動きが特徴。後にアーセナルギアなどの護衛用として多数が量産されました。
アーセナルギア: 『メタルギアソリッド2』に登場。ビッグシェルの地下で開発された、メタルギアシリーズ史上最大の機体です。歩行用の脚を持たず、水中を航行します。大量のミサイルを搭載する移動式要塞であり、「愛国者達」の情報統制AI「G・W.」を護る役割が主目的でした。戦略空母に近い設計思想を持ちます。
アウターヘイブン: 『メタルギアソリッド4』に登場。アーセナルギアの発展型巨大戦艦で、リキッドが奪取・改造しました。潜水能力を持ち、REXのレールガンと核弾頭を搭載して衛星軌道への核攻撃が可能です。アーセナルギアから回収・修復した「G・W.」を搭載し、「愛国者達」のシステムへの干渉拠点としました。
月光: 『メタルギアソリッド4』などに登場。ATセキュリティ社製の無人二足歩行兵器で、2014年以降の戦場における主流兵器の一つです。核搭載は主目的ではなく、戦術兵器として歩兵支援や市街戦で広く運用されます。生体部品やCNT筋繊維など、技術の進化を取り入れながら改良が続けられています。
メタルギアMk.II / Mk.III: 『メタルギアソリッド4』に登場。オタコンとサニーが開発した小型の遠隔機動端末で、兵器ではありません。情報収集やハッキング、各種サポートを行う非戦闘用ロボットであり、メタルギアが純粋な兵器概念から大きく逸脱した極端な例です。

その他の関連兵器

シャゴホッド: 『メタルギアソリッド3』に登場。メタルギアと同時期にソ連で開発競争を行った核搭載型戦車です。二足歩行ではなくドリルによる推進で移動し、核ミサイルを発射する際は機体自体を加速させるという特徴的なシステムを持ちます。ソ連で採用されましたが、後のメタルギア開発にも影響を与えました。
ピースウォーカー計画AI兵器: 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』に登場する、ピースウォーカー以外の試作型無人兵器群（ピューパ、クリサリス、コクーン）です。核は搭載していませんが、AIによる自律行動や多様な移動・戦闘能力を持つ実験機でした。
ウォーカーギア: 『メタルギアソリッドV ファントムペイン』に登場。ヒューイが開発した小型の二足歩行兵器です。人間の全高に近く、気軽な運用が可能ですが防御力に課題があります。小型核兵器を搭載する構想もあり、メタルギアの一種と見なすこともできます。

これらの兵器は、シリーズを通して描かれる戦争や技術の進歩、そして人間のあり方を問いかける物語の重要な要素となっています。メタルギアはその誕生から発展、そして時代の変化に伴う衰退まで、シリーズタイトルの象徴として描かれ続けています。

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