メッサーシュミット P.1112

メッサーシュミット P.1112: 失われた未来のジェット戦闘機

メッサーシュミット P.1112は、第二次世界大戦末期にドイツ空軍のために設計されたジェット戦闘機であり、実際の飛行には至らなかったものの、航空機の進化において重要な役割を果たしました。この機体は、メッサーシュミット社によって開発され、設計者は著名な技術者ヴォルデマール・フォークトです。

開発の背景

メッサーシュミットの開発作業は1945年の2月25日から始まりました。この時期、メッサーシュミット P.1111の開発が中止されたことを受けたもので、P.1112は新たな設計の一環として位置づけられました。設計にあたっては、与圧コックピットや射出座席の装備が求められ、当時の技術トレンドを適切に反映する形で進められました。

フォークトは、P.1112が1946年の中頃には試験飛行が始まると考えていたことからも、この機体に対する期待感が伺えます。元々はMe P.1111の後継機として位置づけられましたが、設計はより保守的で、過去の教訓を最大限に活かした形となりました。

設計の詳細

メッサーシュミット P.1112は、1基のハインケルHeS 011ターボジェットエンジンで駆動される計画でした。設計案としては、V字型尾翼を持つMe P.1112/V1、翼根部分に吸気口があるMe P.1112 S/1、胴体に吸気口を持つMe P.1112 S/2の3つが存在しました。これらの設計は、主翼形状においてメッサーシュミット Me163コメートと共通点があり、すべての案は非常にアグレッシブな性能を持つことを目指していました。

実際、Me P.1112 V/1の胴体前方部分は、バイエルン州の兵舎で部分的に製造されましたが、試作機の製造が始まる前にアメリカ軍による占領があったため、開発はそこで頓挫することとなります。

戦後の影響

P.1112自体は未完成に終わったものの、その設計研究は後に航空機の技術に影響を与えました。ナチス・ドイツの崩壊後、フォークトの設計理念はアメリカのチャンス・ボート・カンパニーにおいて生かされ、F7Uカットラス艦上戦闘機の設計にも繋がることになります。

機体性能の概要

メッサーシュミット P.1112の主なスペックは以下の通りです。

• - 乗員: 1名
• - 全長: 8.25m
• - 全幅: 8.74m
• - 全高: 2.84m
• - 翼面積: 19m²
• - 空虚重量: 2,290kg
• - 全備重量: 4,673kg
• - 主エンジン: ハインケルHeS 011A0ターボジェット（出力12kN）

最大速度は1,100 km/h、航続距離は2時間以上、実用上昇限度は14,000mと、高度な性能が見込まれていました。また、推定される兵装には、30mm MK108機関砲や50mm MK214機関砲などが含まれており、最大搭載量は500kgを計画していました。

終わりに

メッサーシュミット P.1112は、未遂に終わった試作機ながらも、その影響は航空機の設計において長く残ることとなりました。航空史における評価は決して高くないかもしれませんが、未来の航空機に対する視点を提供する重要な要素となったことは間違いありません。

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