メバエ科

メバエ科（Conopidae）

メバエ科は、ハエ目（双翅目）に属する比較的小さな科であり、世界中で約50属800種が確認されています。特に、幼虫がスズメバチやミツバチなどのハチに寄生するという特異な生態で知られています。

分布

メバエ科は、北極、南極、太平洋の島々を除くほぼ全地域に広く分布しています。中央アメリカでは212種、オーストラリアでは100種、日本では25種が確認されており、多様な環境に適応していることが伺えます。

形態

体長は種によって異なり、最小で2.5mm、最大で30mmに達します。体色は黄色、黒色、赤褐色など様々で、寄生するハチに擬態した体色を持つ種も存在します。そのため、メバエはハナアブと同様にハチ目と誤認されることがありますが、翅の数など多くの点でハチとは異なります。頭部は大きく、触角が長いのが特徴です。メバエ亜科の種は単眼を欠きますが、他の亜科では単眼を有しています。

生態

メバエ科の多くの種は、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチなどの社会性ハチに内部寄生します。メバエはハチの体内に卵を産み付け、孵化した幼虫は寄主の体内で成長します。ただし、Stylogastrinae亜科の種はゴキブリやコオロギなどの昆虫に寄生します。産卵管が長く発達している種もおり、これは寄主に効率よく産卵するための適応と考えられます。

多くの種は、寄主となるハチが集まる花の近くでよく見られ、そこで交尾も行います。メバエ科の種は訪花を通じて送粉者としての役割も担いますが、一方でハチに寄生することでハチの送粉活動を阻害する可能性もあります。そのため、メバエによる送粉効果とハチの送粉阻害効果が相殺されていると考えられます。

分類

メバエ科の現生種は、かつて4亜科8族に分類されていましたが、2010年にNotoconopinae亜科が新たに記載され、5亜科となりました。また、化石からは絶滅したPalaeomyopinae亜科が発見されています。

Stylogastrinae亜科は、形態や生態が他の亜科と大きく異なるため、独立した科として扱うべきだという意見もあります。また、かつてはハナアブ科と近縁と考えられていましたが、これは共有原始形質によるものと考えられています。メバエ科は単型のメバエ上科に属し、ミバエ上科と近縁であるとされています。

下位分類

メバエ亜科 (Conopinae)
族 Brachyceraeini
族 Conopini
族 Pleurocerinellini
族 Tropidomyiini
Dalmanniinae
マダラメバエ亜科 (Myopinae)
族 Myopini
族 Sicini
族 Zodionini
Notoconopinae
Notoconopus (1属のみ)
Stylogastrinae
Stylogaster (1属のみ)
†Palaeomyopinae (絶滅)

人間との関係

メバエ科の種は、送粉者として重要な役割を担うハチに寄生するため、農業分野では害虫として認識されることがあります。特に、ミツバチにとっては重要な害虫とされています。一方、ゴキブリやコオロギに寄生するStylogastrinae亜科の種は、直接的な害虫となることが少ないため、関心を集めることは少ないです。

参考文献

Jeffrey H. Skevington, E Christian Thompson, and Sidney Camras (2010) CONOPIDAE (THICK-HEADED FLIES). pp.847-855. In: B.V. Brown (ed.) 2010. Manual of Central American Diptera, Vol. 2 National Research Council (Canada) Research Press. ISBN 978-0660199580

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