メフィスト賞

メフィスト賞の概要と歴史

メフィスト賞（メフィストしょう）は、講談社が発行している文芸雑誌『メフィスト』に由来する公募文学新人賞です。この賞は、エンターテインメント作品を対象としており、対象ジャンルにはミステリー、ファンタジー、SFなどが含まれます。また、作品の選考は『メフィスト』の編集者が直接行う点が特長です。これは、従来の公募文学賞とは異なる手法であり、選考過程における透明性を促進しています。

メフィスト賞では、受賞に値する作品がない場合には次回の選考に持ち越され、欠番が発生することはありません。この賞では、選考結果のみならず、編集者が注目した作品が座談会形式で紹介されることもあり、受賞に至らなかった作品でも興味深いものがあれば応募者にコンタクトを取ることがあります。これにより、他の作品が講談社からデビューにつながる可能性があります。このような新しい取り組みは、応募者のモチベーションを高め、質の高い作品を発表する土壌を作り出しています。

創設当初は賞金が存在しなかったものの、受賞作がそのまま出版されるため、商業出版から得られる印税が実質的な報酬となります。受賞者には、江戸川乱歩賞と同様に、シャーロック・ホームズ像が授与されますが、授賞式は行われず、担当編集者から直接手渡される形が取られています。初期の受賞作は主に講談社ノベルスとして出版されていましたが、2017年以降はハードカバーや講談社タイガからの刊行が増えてきました。

2013年には、応募要項の大幅な変更がありました。これには、講談社BOX新人賞との統合や、原稿枚数の上限規定が設けられたことが含まれます。此外、募集要項には『人生で最も影響を受けた小説』の記載が追加され、応募のフィードバックの在り方にも変化が見られました。

2020年12月には、再度応募要項が改訂され、応募期間が上期と下期の二つに分かれ、投稿は講談社の文芸サイト「tree」からPDF形式での受付に変更されました。この時期からは、作品の上限が撤廃され、下限が設定されるなど、より多様な作品が受け付けられるようになりました。

賞の特色と受賞者

メフィスト賞は創設以来、常に「究極のエンターテインメント」を追求する姿勢を示しています。第1回受賞作の森博嗣の『すべてがFになる』は理系ミステリーとして高い評価を得ており、この後も多くの個性的で斬新な作品が受賞しています。受賞作品には、ミステリーだけでなくファンタジーやライトノベルなど、さまざまなジャンルが含まれているため、受賞者は「メフィスト賞作家」として知られています。

この賞の受賞者たちは、他の職を持ちながらデビューを果たすことが多く、地方に在住しながら創作活動を継続するケースが目立ちます。また、受賞者の年齢層は様々で、最年少は19歳の浦賀和宏であり、逆に最高年齢の受賞者は56歳の丸山天寿です。受賞作家は、特定のジャンルにとらわれず、個々の特性を生かした新しい作品を創り出すことが期待されています。

現在では、受賞者同士のネットワークが生まれており、同窓会が開催されるなど、受賞後の活動も活発に行われています。メフィスト賞に参加した作家たちは、文学界における重要な位置を占めており、数々の受賞歴を持つ作家が輩出されています。このように、メフィスト賞は日本の文芸賞の中でもユニークな存在であり続けています。

附記

メフィスト賞の受賞作は、後に文学賞を受賞する作家の登竜門としても知られ、数々の著名な作品が生まれています。出版界において、エンターテインメント文学の新たな可能性を追求する場となることに期待が寄せられています。

もう一度検索