浦賀和宏

浦賀和宏（うらが かずひろ）

浦賀和宏は、1978年12月8日に神奈川県で生まれ、2020年2月25日に41歳の若さで亡くなった小説家、推理作家です。本名は八木剛（やぎ つよし）といいます。

経歴

1998年に『記憶の果て』で第5回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビューしました。彼の作品は、青春小説、SF、ミステリーといった多様なジャンルの要素が融合した、独特なプロットが特徴です。京極夏彦は、浦賀の作品を「多くのジャンルの新たな可能性を悉く内包して」いる「先行作品に対する敬意ある挑発」と評しました。乾くるみの『Jの神話』、積木鏡介の『歪んだ創世記』と共に、メフィスト賞のイメージを刷新する存在として注目されました。

安藤直樹を主人公とした「笑わない名探偵」シリーズは、ジャンルとの距離を測るような展開を見せましたが、『透明人間 UBIQUITY』で一時中断されました。その後、松浦純菜・八木剛士シリーズの執筆を開始し、ここでは先行作品や現実世界のトレンドを皮肉ったストーリーが展開されました。同シリーズ完結後には、「シーズン2」として萩原重化学工業をめぐる安藤直樹シリーズが開始され、2作品が刊行されています。

2010年代に入ると、文庫版『彼女は存在しない』がベストセラーとなり、徐々に版を重ねました。このヒットを機に、絶版となっていた過去の作品が続々と文庫化・復刊され、新作の発表も積極的に行われるようになりました。

2020年2月25日、脳出血のため急逝。早すぎる死が惜しまれました。

人物

浦賀和宏は、イエロー・マジック・オーケストラ（YMO）の熱狂的なファンであり、アディエマス、オービタル、アンダーワールド、エニグマ、エイフェックス・ツイン、ビョークなど、テクノ、ハウス、エレクトロニカといった幅広い電子音楽に深い知識を持っていました。これらの音楽への嗜好は、作品の重要な要素としてしばしば登場します。趣味は他にも、『AKIRA』のようなSF作品や、藤子不二雄の作品、M・ナイト・シャマラン監督の映画などを好んでいました。これらの作品は、彼の作品にオマージュとして反映されることもあります。Twitterでは、古今東西の映画について頻繁に言及していました。

自身の経歴についてはほとんど明かしておらず、2002～2003年頃からは著者近影の掲載もされていません。

メフィスト賞のデビュー最年少記録保持者です（2024年現在）。

作風

ミステリーのプロットを軸に、青春小説やSFの要素を巧みに取り入れた作風が特徴です。近親相姦、同性愛、カニバリズムなど、タブーとされるテーマを扱うことが多く、特にカニバリズムへのこだわりは強く、自身の作品をパロディ化した『浦賀和宏殺人事件』では、「あいつの小説、なんかある度にすぐに人を殺して食うんだよ！」という台詞が登場します。また、作中ではオタク文化や読者層に対する辛辣な批判も描かれています。

自身の本名に由来する八木剛、八木剛士という名前の人物が、多くの作品に登場することも特徴的です。

作品リスト

安藤直樹シリーズ
萩原重化学工業シリーズ
松浦純菜・八木剛士シリーズ
桑原銀次郎シリーズ
ノンシリーズ
単行本未収録短編

（詳細な作品リストは省略）

浦賀和宏は、その独特な世界観と、タブーに挑戦する作風で、多くの読者を魅了し続けました。

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