メヘル・バーバー

メヘル・バーバー：沈黙の神秘家、愛の導き手

メヘル・バーバー（1894年2月25日 - 1969年1月31日）は、インドの神秘家であり、霊的な指導者として知られています。彼は1954年に自身を「今世紀のアヴァターラ（神の化身）」であると宣言し、その教えと生き方は多くの人々に影響を与えました。彼の墓、通称サマディは、インドのメヘラバッドにあり、信者たちの巡礼地となっています。

生涯と活動

若年期と霊的変遷

メルワン・シェリア・イラニーとして生まれたバーバーは、ゾロアスター教徒の家庭で育ちました。19歳の時、彼はハズラッド・バーバージャンという聖者に出会い、そのキスによって深遠な霊的体験をしました。その後、タジュディン・バーバー、ナラヤン・マハラジ、シルディ・サイ・バーバー、ウスパニ・マハラジといった5人の霊的指導者（パーフェクト・マスター）から指導を受け、霊的な変遷を遂げました。1922年、27歳の時に弟子を集め始め、「メヘル・バーバー（慈愛深き父）」という名前を与えられました。

沈黙の時代

1925年7月10日から亡くなる1969年1月31日まで、バーバーは約44年間沈黙を守り続けました。彼はアルファベットボードや手によるジェスチャーを使って意思疎通を図り、その沈黙は信者や世間の人々にとって神秘的な謎のままでした。

その他の活動

彼は弟子たちと独居生活を送ったり、断食をしたり、各地を旅したりしました。ライ病患者や貧しい人々への慈善活動にも従事し、1931年には初めて西洋諸国を訪問し、多くの弟子を魅了しました。1940年代には、マスト（神に酔える人々）と呼ばれる特殊な霊的求道者たちと活動を共にしました。1942年からは「新しい人生」と呼ばれる期間に入り、選ばれた弟子たちと身分を隠してインド中を旅しました。1962年には「東洋と西洋の集合」と呼ばれる大規模な集会を開き、西洋からの弟子たちを招きました。1966年には、LSDなどの薬物の使用に対して、真の利益をもたらさないと警告しました。健康状態が悪化しても、「ユニバーサル・ワーク」を続け、1969年1月31日に息を引き取りました。

教え

バーバーは、人生の目的、輪廻転生、宇宙の幻影性、神の存在、そして神実現について教えました。彼は、宇宙は神の想像であり、魂は神自身の神性を個別化して実現するために想像によって生じたものであると説きました。また、輪廻転生の生死を逃れ、神実現を達成したいと願う求道者には実践的なアドバイスを与えました。彼の教えは、『メヘル・バーバー講話集』と『神は語る』という二つの重要な本にまとめられています。

神は語る

『神は語る』では、無意識の神から意識のある神へと至る魂の旅が描かれています。魂は、進化の過程で石、金属、植物、虫、鳥、動物、人間といった形態を経験し、輪廻転生を繰り返しながら、徐々に意識を高めていきます。そして、最終的には神としての真の同一性を理解し、神実現を達成すると説いています。

メヘル・バーバー講話集

『メヘル・バーバー講話集』には、精神的な印象、幻影の原理、エゴの性質、輪廻転生、カルマ、暴力と非暴力、瞑想、愛、弟子の道、神実現など、霊的求道者の進歩に関する様々なトピックについて、バーバーの教えがまとめられています。彼は、これらの教えを通じて、人々が神実現へと向かうための道を示しました。

パーフェクト・マスターとアヴァター

バーバーは、地球上には常に56人の神実現した魂が存在し、そのうち5人が「パーフェクト・マスター」であると語りました。アヴァターは特別なパーフェクト・マスターであり、神実現を他の魂よりも先に行った最初の魂であるとしました。彼は、過去にザラスシュトラ、ラーマ、クリシュナ、釈迦、キリスト、ムハンマドがこの役割を担ったと述べています。

遺産

バーバーの教えは、世界中に弟子や信者を残しました。彼は宣伝には消極的でしたが、信者たちに「自分の人生そのものが愛と真理を伝えるメッセージとなるように生きなさい」と励ましました。彼が設立したアヴァター・メヘル・バーバー慈善トラストは、学校、薬局、病院などを運営し、彼の聖廟や巡礼者の施設を管理しています。彼の信者たちは、特定の儀式を持たず、自由に祈りや瞑想、音楽などを実践し、愛を持って神を憶うことを大切にしています。

バーバーの教えは、ピート・タウンゼント（ザ・フー）やメラニー・ソフィカなど、ポップカルチャーのアーティストにも影響を与えました。彼のメッセージである「Don't worry, be happy.」は、多くの人々に知られています。

メヘル・バーバーは、沈黙を通して愛と真理を伝え、多くの人々の心を導いた霊的な指導者として、今もなお世界中で敬愛されています。

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