メランコリー (梓みちよの曲)

梓みちよが歌唱する「メランコリー」は、1976年9月21日にシングルレコードとして発表された楽曲です。この作品は、作詞を喜多条忠、作曲を吉田拓郎、そして編曲を萩田光雄が担当しており、発表後まもなく日本の音楽シーンにおいて大きな存在感を示し、梓みちよの代表的な楽曲の一つとして広く認知されるようになりました。

楽曲の評価と商業的な成功は、特にリリースされた年末から翌年にかけて顕著でした。1976年12月31日に開催された第18回日本レコード大賞では、編曲を担当した萩田光雄氏がその優れた手腕を認められ、編曲賞を獲得しました。この受賞は楽曲の評価を高め、同日の大晦日に行われた第27回NHK紅白歌合戦においても、梓みちよが通算10回目となる紅白出場を果たし、本楽曲を披露するに至りました。この紅白歌合戦への出演は、楽曲のさらなる認知度向上に貢献したと考えられます。惜しくも翌年の第28回紅白歌合戦への出場は叶いませんでしたが、次に彼女が紅白の舞台に立つのは、それから16年後の1992年、第43回でのこととなります。

商業面においても、「メランコリー」は成功を収めました。1977年に入ってからもロングヒットを継続し、年間を通じて多くのリスナーに支持されました。その結果、オリコンが発表する1977年の年間シングルチャートでは第59位にランクインするなど、その人気を持続させました。レコード盤の販売実績からも、当時の楽曲への関心の高さがうかがえます。

この楽曲が誕生するまでには、興味深い制作背景がありました。作詞を手掛けた喜多条忠氏は、それまで主にフォークソングの分野で活躍していましたが、作曲者である吉田拓郎氏から「歌謡曲の作詞なんて、君には無理だろう？」という、ある種の挑戦的な言葉を受けたことが、新たな分野へ踏み出す大きなきっかけになったと伝えられています。喜多条氏はこれに奮起し、「メランコリー」の歌詞を書き上げました。この楽曲の成功は、喜多条氏がフォークソングだけでなく、歌謡曲の作詞家としても確固たる地位を築く端緒となりました。

レコーディングの際にも、作曲者の吉田拓郎氏と歌手である梓みちよ氏の間で印象的なやり取りがあったとされています。吉田氏は、圧倒的な歌唱力を持つ梓氏に対し、あえて感情や技巧を抑え、「もっと下手に、思い切り下手クソに歌ってほしい」といった、通常のディレクションとは異なる要望を出したと伝えられています。これに対して梓氏は、吉田氏の求めるニュアンスを理解しようと、意図的に「下手」に歌ってみせた上で、「これでいいわけ？ ふん、変なの、アンタたちの音楽ね」といった趣旨の発言をしたという逸話が残されています。このような独特なやり取りを経て、楽曲の歌唱表現が確立されたのかもしれません。

シングル盤「メランコリー」には、表題曲を含む二曲が収録されています。

メランコリー (A面)
作詞：喜多条忠
作曲：吉田拓郎
編曲：萩田光雄
演奏時間：3分25秒
雪どけ (B面)
訳詞：麻生香太郎
作曲：F.Hallander
編曲：森岡賢一郎
演奏時間：2分56秒

発表後、「メランコリー」は複数のアーティストによってカバーされています。

吉田拓郎: この楽曲の作曲者である吉田拓郎自身も、1977年4月21日にリリースされた自身のアルバム『ぷらいべえと』の中でセルフカバーを行っています。
研ナオコ: 研ナオコ氏も、1993年10月21日発売のカバー・アルバム『Ago あの頃へラブレター』に本楽曲のカバーを収録しています。

この楽曲は、梓みちよのキャリアを代表する一曲として、後年発売された様々なアルバムに収録されています。例えば、彼女のベストアルバムである『エッセンシャル・ベスト 梓みちよ』や、1970年代後半のヒット曲を集めたコンピレーション盤『続・青春歌年鑑 1977』などで聴くことができます。

「メランコリー」は、1976年から1977年にかけての日本の音楽シーンの一端を映し出す楽曲であり、当時のヒットチャートや音楽賞、そしてNHK紅白歌合戦といった音楽番組の歴史を語る上でも触れられることが多い作品です。また、楽曲の歌詞や背景に関連して、東京都港区のご当地ソングリストに名前が挙げられることもあります。

参考文献として、「オリコンチャート大辞典」などが挙げられます。

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