メルセデス・ベンツ・M275エンジン

メルセデス・ベンツM275エンジン：ラグジュアリーカーを駆る心臓

メルセデス・ベンツのM275エンジンは、同社のフラッグシップモデルに搭載されたV型12気筒ガソリンエンジンです。2002年にSクラス(W220)に初搭載され、それまでのM137エンジンに代わり、メルセデス・ベンツの高級セダンの心臓部として活躍しました。

M275エンジンの特徴：伝統と革新の融合

M275エンジンは、前身であるM137エンジンをベースに開発されました。しかし、単なる改良ではなく、いくつかの重要な技術革新が導入されています。特に、メルセデス・ベンツの12気筒エンジンとしては初めてツインターボチャージャーを採用した点が大きな特徴です。これにより、圧倒的な最高出力と最大トルクを実現し、当時のライバルであるBMWやアウディを凌駕する性能を誇りました。

M137エンジンと同様に、シリンダー列ごとに1つのカムシャフトを使用し、アルミニウム製のローラロッカーアームでバルブを駆動するSOHC方式を採用しています。排気量は5.5リッターと、M137エンジンより若干ダウンサイジングされましたが、ツインターボの採用により、500PSを超える圧倒的なパワーと、80kgmを超える太いトルクを実現しました。この高いトルクを活かすため、7速ATではなく5速ATが組み合わされています。

M275エンジンのバリエーション：それぞれのニーズに応える選択肢

M275エンジンは、標準モデルに加え、AMGによるチューニングバージョンや、マイバッハ向けにカスタマイズされたバージョンなどが存在します。

標準M275エンジン

標準的なM275エンジンは、5,513ccの排気量で、最高出力は500PSから517PS、最大トルクは81.6kgmから84.6kgmに及びます。Sクラス、CLクラス、SLクラスといった、メルセデス・ベンツのトップレンジモデルに搭載されました。

M275 AMGエンジン

AMGは、M275エンジンをベースに、より高性能なM275 AMGエンジンを開発しました。排気量を6.0リッターに拡大し、最高出力は612PSに到達。最大トルクは1,100N・mに達するポテンシャルを持つものの、トランスミッションへの負担を考慮し、1,000N・mに電子制御で制限されています。搭載車種は、S65 AMG、CL65 AMG、SL65 AMG、そしてマイバッハ57S/62Sなど、メルセデス・ベンツの最高峰モデルに搭載され、300km/hを超える最高速度を実現しました。

2009年には、マイバッハツェッペリン用に640PSバージョンが登場。フェイスリフト後のCLクラスにも、同様のスペックを持つエンジンが搭載されました。

M285エンジン

マイバッハ57/62には、M285エンジンが搭載されました。これは、M275エンジンをベースに、ターボチャージャーや電子制御などを改良したバージョンで、5.5リッターの排気量から550PSの最高出力と900N・mの最大トルクを発生します。

ブラバスによるチューニング

チューナーであるブラバスは、M275エンジンをベースに、E V12やブラバスロケットといったモデルに搭載する、730PSという驚異的なパワーを持つエンジンを開発しました。排気量は6.3Lに拡大され、最大トルクは1,320N・mに達しますが、トランスミッションの保護のため、1,100N・mに制限されています。

まとめ：時代を彩った高性能V12エンジン

M275エンジンは、メルセデス・ベンツの技術力の高さを見せつける、傑作V12エンジンでした。その圧倒的なパワーとトルク、そして様々なバリエーションは、多くの高級車愛好家を魅了しました。その高い信頼性とパフォーマンスは、今もなお高く評価されています。登場から年月が経っていますが、その存在感は色褪せることなく、自動車史に名を刻むエンジンと言えるでしょう。

もう一度検索