メルセデス・ベンツ・W114

メルセデス・ベンツW114/W115：信頼性と革新性を兼ね備えた名車

メルセデス・ベンツW114/W115は、ダイムラー・ベンツが1968年から1976年にかけて製造した中型乗用車です。W110の後継モデルとして登場し、1976年にはW123に生産が引き継がれました。W114は6気筒ガソリンエンジンを搭載したモデル、W115は4気筒ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを搭載したモデルとして展開されました。

当時、W114/W115は上位モデルであるSクラスと区別するために「コンパクト」と呼ばれていました。その扱いやすさと、Sクラスに劣らない快適性から高い人気を博しました。後継モデルのW123も、小型モデルの190クラスが登場するまでは「コンパクト」と呼ばれていました。

革新的な技術と安全性

W114/W115の大きな特徴として、世界で初めて5気筒ディーゼルエンジンを採用したことが挙げられます。240D 3.0や300Dなどのモデルに搭載され、優れた燃費性能とトルクを実現しました。

1973年にはマイナーチェンジが行われ、外観と内装のデザインが変更されました。このマイナーチェンジでは、安全性の向上に重点が置かれ、当時の安全実験車ESFでの研究成果が反映されています。具体的には、フロントバンパーの高さを上げ、雨天走行時の視界を確保するためのAピラーとリアウインドウのレインチャンネル、ヘッドライトワイパーなどが採用されました。さらに、衝撃吸収式ステアリングハンドルや、猫の耳のような形状をしたヘッドレストなど、安全性に配慮した設計が施されています。

エレガントなクーペモデル

W114/W115シリーズには、ピラーレスハードトップのクーペモデルもラインナップされていました。モデル名には数字の後に「C」が付記され、250C、250CE、280CEなどが存在しました。中でも250CEは、ダイムラー・ベンツの乗用車として初めて電子制御式燃料噴射システムであるDジェトロニックを採用したモデルとして知られています。ダイムラー・ベンツは1950年代から燃料噴射技術の開発に力を入れており、その技術がW114/W115にも活かされています。

驚異の走行距離記録

W114/W115の耐久性の高さを象徴するエピソードとして、ギリシャのタクシー運転手、グレゴリオス・サキニディス氏が1976年式W115「240D」を23年間、460万kmも走行させた記録があります。エンジンを11回交換しながらも、彼はこの車をタクシーとして使い続けました。この驚異的な走行距離は、W114/W115の信頼性の高さを証明するものであり、2004年にはこの車はメルセデス・ベンツ・ミュージアムに寄贈されました。

まとめ

メルセデス・ベンツW114/W115は、先進的な技術と高い安全性、そして優れた耐久性を兼ね備えた名車です。世界初の5気筒ディーゼルエンジンや、安全性を重視した設計、そして460万kmという驚異的な走行距離記録は、このモデルが持つ高い信頼性を示しています。そのエレガントなデザインと高い実用性から、現在でも多くのファンを魅了し続けています。

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