メルセデス・ベンツ・W124

メルセデス・ベンツ初代Eクラス：W124シリーズの輝き

メルセデス・ベンツのミディアムクラス、初代Eクラスとして知られるW124シリーズ。そのコードネームは、ボディタイプを示す頭文字で構成されています。Wはセダン、Sはステーションワゴン、Cはクーペ、Aはカブリオレ、Vはリムジン、Fはローリングシャーシ、VFはロングホイールベースのローリングシャーシをそれぞれ表しています。

1985年から1995年にかけて生産されたW124は、W123型の後継車種として登場しました。4ドアセダン、5ドアステーションワゴン、2ドアクーペ、2ドアカブリオレ、そして6ドアリムジンと、幅広いボディバリエーションを展開。そのデザインの特徴は、台形の小ぶりなテールランプと、フラッシュサーフェイスによる空力性能の高さです。特に、Cd値0.29という優れた空気抵抗係数は、当時のメルセデス市販車として初の快挙でした。

技術面では、リアサスペンションに190Eで開発されたマルチリンク式を採用。従来のセミトレーリングアーム式から進化し、走行性能の向上に大きく貢献しました。車体サイズもW201型（190E）よりも大型化され、よりゆとりある室内空間を実現しています。

日本においては、バブル景気真っ只中だったこともあり、正規輸入車、並行輸入車ともに多くのW124が輸入されました。中でも、ヤナセが販売した260Eロングホイールベース車は特筆すべき存在です。定員8名の6ドアリムジンとして、単なるホイールベース延長ではなく、メルセデス・ベンツ本社がホワイトボディから製作。リムジンの課題であるボディ剛性の低下を抑え、高い品質を維持していました。

歴史を振り返ると、1985年のドイツ本国での発売開始に始まり、翌年には日本でも230E、300E、300Dターボが発売されました。その後、クーペ、ステーションワゴンモデルが追加され、ラインナップは着実に拡大。1990年にはマイナーチェンジを行い、サイドプロテクトパネルを全車標準装備とするなど、安全性能の向上が図られました。

高性能モデルとしては、500Eが注目を集めました。ポルシェのバイザッハ研究所が開発に携わり、500SLに搭載されていたV8エンジンと専用の足回りを搭載。フロントフェンダーの張り出しが特徴的なこのモデルは、一部の生産工程がポルシェの工場で行われていたことでも知られています。日本市場には正規導入されませんでしたが、多くの並行輸入車が入ってきました。

400E（北米・日本向け、右ハンドル仕様は開発されず）は、1989年に発売されたレクサスLS400をライバルとして開発されました。セグメントは異なりますが、価格帯が近かったことから、実質的な競合関係にあったといえます。日本市場向けには、420という数字が「死に」に通じるとして、400と改名されました。

1992年には、直列4気筒と直列6気筒ガソリンエンジンの刷新、トランスミッションの変更、エアバッグの標準装備化など、大幅な改良が行われました。そして1993年、最終的なマイナーチェンジを経て、W124はEクラスへとバトンタッチしました。

現在でもW124シリーズは根強い人気を誇り、中古車市場でも多くのファンを魅了しています。しかし、生産終了から相当な年数が経過しているため、良好な状態の個体は減少傾向にあります。「最善か無か」の時代に生まれた最後のミディアムクラスとして、その存在感は今も色褪せません。

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