メルセデスEQ

メルセデスEQと電気自動車戦略：高級ブランドのEVシフト

メルセデス・ベンツは、電気自動車（BEV）市場への本格参入を図るため、2016年に「メルセデスEQ」というサブブランドを設立しました。これは、同社の電動化戦略における重要な柱であり、高級車市場におけるBEVの地位確立を目指しています。姉妹ブランドとして、スマートEQも存在し、こちらはコンパクトカーに特化したBEVブランドとして展開されています。

EQシリーズ：多様なモデルと技術

メルセデスEQは、SUV、セダン、コンパクトカーなど、幅広い車種をラインナップしています。最初のモデルであるEQCは、2018年に発表され、GLCクラスをベースとしたBEVとして注目を集めました。その後、EQA、EQB、EQE、EQSといった様々なモデルが追加され、それぞれ異なる車格と航続距離、そして個性的なデザインが特徴です。EQSは、BEV専用のプラットフォームを採用した最初のモデルであり、先進技術の結晶と言えるでしょう。

これらのモデルは、バッテリー性能の向上にも力を入れており、一充電あたりの航続距離はモデルによって異なりますが、500kmを超えるモデルも存在します。また、高出力モーターや全輪駆動システム（4MATIC）の採用により、高い走行性能も実現しています。メルセデス・ベンツは、2025年までに世界販売台数の15～25％をEQブランドが占めることを目標としており、その達成に向け、バッテリー技術の進化、生産体制の強化に継続的に投資を続けています。

特にバッテリー技術に関しては、エネルギー密度の向上に注力し、2010年から2016年までの水準から、2025年までに年間約14％の改善を目指しています。この目標達成のため、ダイムラーAGはグローバルなバッテリー生産設備への多額の投資を行っており、ドイツのカメンツ工場にあるACCUmotive子会社が中心的な役割を担っています。

スマートEQ：コンパクトBEVへの特化

スマートEQは、メルセデスEQとは異なる戦略を展開しています。当初は既存の内燃機関モデルをベースとした電動化モデルを展開していましたが、2020年には内燃機関モデルの販売を終了し、BEV専用ブランドへと完全移行しました。現在では、コンパクトSUVを中心に、個性的なデザインと高い走行性能を兼ね備えたモデルを展開しています。

販売戦略と拠点

メルセデスEQとスマートEQの車両は、既存のメルセデス・ベンツ正規販売店を通じて販売されています。また、BEV専門の販売拠点を展開する試みも行われており、顧客へのBEV提案を強化しています。ただし、専売拠点の維持は、現状では課題となっています。

商標権に関する争い

「EQ」というブランド名は、商標権に関する争いを経験しています。中国の奇瑞汽車との間で「eQ」の商標使用をめぐる争いが発生しましたが、最終的にはメルセデス・ベンツが「EQ」の商標権を保持することとなりました。

まとめ

メルセデスEQは、メルセデス・ベンツの電気自動車戦略の中核を担う重要なブランドです。高級車ブランドとしての地位を維持しつつ、BEV市場における存在感を高めようと、技術革新、生産体制の強化、販売網の拡大など、多方面からの取り組みを積極的に行っています。スマートEQも、コンパクトBEV市場で独自の戦略を展開しており、メルセデス・ベンツグループ全体の電動化戦略を支える重要な役割を果たしています。今後、更なるモデルの追加や技術革新が期待されます。

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