メルセデスEQ・フォーミュラEチーム

メルセデスEQフォーミュラEチーム：電気自動車レースへの挑戦と栄光

メルセデス・ベンツは、2019年から2022年にかけてフォーミュラE選手権にワークスチームとして参戦しました。メルセデス・ベンツ・グランプリ（MGP）が中心となり進められたこのプロジェクトは、電気自動車技術の最先端を競う舞台として、大きな注目を集めました。

チーム設立と組織体制

2017年9月、メルセデス・ベンツ・フォーミュラE社が設立され、MGP社のCEOであるトト・ヴォルフがCEOを兼務しました。イギリスのブラックリーに拠点を置き、当初はメルセデス系のセミワークスチームであるHWAチームがサーキット運営を担当、車両組み立てはドイツのアファルターバッハで行われました。2020年末から2021年にかけて、チーム運営拠点はブラックリーに移転しました。

パワートレインと車両性能

メルセデスEQチームの車両は「Mercedes-EQ Silver Arrow」と名付けられました。フォーミュラEでは車体は共通ですが、パワートレイン（インバーター、モーター、トランスミッションなど）とエネルギー管理ソフトウェアは各チームが独自開発することが許されていました。メルセデスAMG・ハイパフォーマンス・パワートレインズ（HPP）がパワートレイン開発・製造を担当し、予選では最大250kW、決勝では最大200kWの出力を実現。アタックモードやファンブーストではさらに出力が向上する設計でした。

参戦と華々しい成功

2018-19シーズンはHWAチームが参戦準備としてフォーミュラEに参戦。ヴェンチュリー・レーシングと技術提携を行い、経験を積みました。2019-20シーズン、メルセデスEQフォーミュラEチームは正式にデビュー。ストフェル・バンドーンとニック・デ・フリースをドライバーに迎えました。このシーズンは、チームランキング3位という結果に終わりましたが、バンドーンの最終戦での優勝はチームの潜在能力を示すものでした。

2020-21シーズンは、フォーミュラEがFIA世界選手権に昇格した最初のシーズンでした。デ・フリースが開幕戦で優勝、バンドーンも優勝を果たすなど、好調なスタートを切りました。シーズン終盤までタイトル争いは混戦模様でしたが、デ・フリースがドライバーズチャンピオン、メルセデスEQがチームズチャンピオンを獲得し、初代ワールドチャンピオンの栄冠を手にしました。

2021-22シーズンは、メルセデスEQにとって最後のシーズンとなりました。チームはシーズン開始前にシーズン終了後の撤退を発表していました。このシーズンでも、バンドーンがドライバーズチャンピオンを獲得、チームもチームズタイトルを獲得し、2年連続のダブルタイトルを獲得するという偉業を達成しました。

マクラーレンへの売却と未来

2022年シーズン終了後、メルセデスEQフォーミュラEチームはマクラーレンに売却され、「ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム」として活動を継続しました。メルセデスEQフォーミュラEチームは、短い期間ながらもフォーミュラEの歴史に大きな足跡を残したチームと言えるでしょう。その挑戦と成功は、電動化に向かう自動車業界にとって、大きな示唆を与えたと言えます。

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