メレンゲ (音楽)

メレンゲ：カリブ海の情熱とリズム

メレンゲは、カリブ海諸国を中心に愛されるラテン音楽であり、ダンスでもあります。ドミニカ共和国とベネズエラで独自の発展を遂げた2つの系統があり、それぞれに異なる魅力を持っています。本稿では主にドミニカ共和国のメレンゲについて解説します。

音楽的特徴：アフリカとヨーロッパの融合

メレンゲのルーツは、アフリカとヨーロッパの音楽文化の融合にあります。アコーディオン、ベースギター、ギロ、タンボーラといった伝統的な楽器に加え、ピアノ、サクソフォン、トランペット、ギター、コンガなど、様々な楽器が用いられることで、豊かなサウンドを生み出しています。

特徴的なのは、その2拍子の単純ながらも軽快なリズムです。踊りやすく、即興演奏にも適しているため、ヒップホップやハウスミュージックなど、他の音楽ジャンルとの融合も盛んです。近年では、メレンラップやメレンハウスといった新しいスタイルも生まれ、メレンゲは進化を続けています。

歴史：19世紀から現代へ

メレンゲという言葉の語源は諸説ありますが、フランスのメレンゲ菓子や西アフリカの音楽・ダンスに関連する言葉であるという説があります。19世紀半ばには、ギロとタンボーラを主とした基本スタイルが確立されました。

その後、「メレンゲの父」と呼ばれるファン・バウティスタ・アルフォンセカによって、上流階級向けの洗練されたメレンゲが創り出されました。一方、マリンバやアコーディオンを取り入れた、より素朴でテンポの速い民俗的なメレンゲ（ペリーコ・リピアーオ）も人気を集めました。

20世紀半ば、ドミニカ共和国の独裁者ラファエル・トルヒーヨ政権下では、メレンゲが政治宣伝の道具として利用され、国民的なダンスとして推奨されました。この時代、ベースギター、ギター、サクソフォンを加えたメレンゲ楽団（メレンゲ・ティピコ）というスタイルが確立し、ルイス・アルベルティのダンス向けのメレンゲもヒットしました。

1960年代にはジョニー・ベントゥーラが、ホーンセクションを含む大編成のバンドと派手な衣装で革新的なメレンゲを展開。1980年代にはウィルフリード・バルガスらが、ニューヨークやラテンアメリカ全域にメレンゲを広めました。

1980年代後半、フアン・ルイス・ゲラ＆4.40（クアトロ・クアレンタ）の「コーヒーの雨を降らせろ」の大ヒットは、メレンゲ音楽に大きな転換をもたらしました。それまでの陳腐な恋愛歌謡から脱却し、詩的で日常的な歌詞が共感を呼びました。

1990年代以降は、サルサとの融合や、ニューヨークのラテン系コミュニティによるクラブミュージックとしての発展など、メレンゲは様々な方向へと進化を遂げています。

ダンス：情熱的なステップ

メレンゲは、2ビートのリズムに合わせて踊られるラテンダンスでもあります。基本は左右へのステップの繰り返しですが、前に出る動きも加わります。

かつては男女が密着して踊るスタイルが一般的でしたが、近年はプンタやマカレナなどの影響で、より力強くキビキビとしたダンススタイルが流行しています。

ベネズエラのメレンゲ

ベネズエラのメレンゲは、ドミニカ共和国のメレンゲとは異なる特徴を持っています。3拍子と2拍子が交互に現れる8分の5拍子が基本リズムで、アフロ系のスイング感とヨーロッパ音楽のコード進行が融合しています。19世紀半ばにカラカスを中心に流行し、20世紀中頃までは国民的な音楽として親しまれていましたが、その後は衰退していきました。

代表的なアーティスト

フアン・ルイス・ゲラ
ミリー・ケサダ
* ウィルフリード・バルガス

参考文献

北中正和 監修『世界は音楽でできている：中南米・北米・アフリカ編』音楽出版社、2007年。ISBN 9784861710261。

関連項目

サルサ (ダンス)、サルサ (音楽)、ズンバ、バチャータ

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