モザイク四重奏団

モザイク四重奏団

モザイク四重奏団（Quatuor Mosaïques）は、1985年にオーストリアのウィーンで結成された、ピリオド楽器（古楽器）を用いた弦楽四重奏団として世界的に高い評価を得ているアンサンブルです。

結成と理念

この四重奏団は、著名な指揮者ニコラウス・アーノンクールが主宰した、歴史的な演奏実践を探求するアンサンブル、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの主要メンバーであった奏者たちが集まることによって誕生しました。彼らは既に、バロック音楽や古典派音楽を作曲当時のスタイルや楽器で演奏することにおいて豊富な経験と深い洞察を持っていました。モザイク四重奏団の設立は、彼らが培ってきた古楽演奏への情熱と知識を、弦楽四重奏という室内楽の最も核となる分野に注ぎ込むためのものであり、結成当初からピリオド楽器の使用を活動の根幹に置いています。

ピリオド楽器による響き

モザイク四重奏団の演奏スタイルは、現代のオーケストラで一般的に用いられる楽器ではなく、18世紀から19世紀初頭にかけて実際に使用されていた楽器や、その様式に則って復元された楽器を用いることにあります。特に弦楽器においては、現代の金属弦ではなく、当時の主流であったガット弦を使用することが特徴です。これにより、より柔らかく、豊かな倍音を含んだ温かみのある響きが生まれます。また、当時の弓や奏法への研究に基づいたアーティキュレーションやダイナミクスの解釈は、作品が書かれた時代の音響空間を現代に蘇らせることを目指しています。彼らのアプローチは、特にハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲において、作品本来の精緻な構造や繊細なニュアンスを鮮やかに描き出すことで知られています。

メンバー

結成以来、四重奏団の中心的なメンバーは以下の通りです。

第1ヴァイオリン：エーリヒ・ヘーバルト (Erich Höbarth)
第2ヴァイオリン：アンドレア・ビショフ (Andrea Bischof)
ヴィオラ：アニタ・ミッテラー (Anita Mitterer)
チェロ：クリストフ・コワン (Christophe Coin)

これらの奏者はそれぞれが著名なソリストや他の古楽アンサンブルでも活躍しており、その個々の優れた技量と、アンサンブルとしての長年にわたる緊密な連携が、モザイク四重奏団ならではの洗練された演奏を生み出しています。

古楽界での地位

モザイク四重奏団は、ピリオド楽器を用いた弦楽四重奏団の分野において、間違いなく世界のトップランナーの一つと目されています。彼らの演奏は、学術的な探求に基づきながらも、聴衆に深い感動を与える芸術性との絶妙なバランスが評価されています。特に古典派の主要な弦楽四重奏曲の録音は数多く、これらは国際的な音楽賞を受賞するなど、その演奏水準の高さは広く認められています。彼らの活動は、ピリオド楽器による室内楽演奏の可能性を切り拓き、後進の演奏家たちにも大きな影響を与えています。彼らの探求心と妥協なき芸術への姿勢は、古楽という分野の魅力を現代に伝え続ける上で極めて重要な役割を果たしています。

彼らの活動や公演情報については、公式ウェブサイトなどで最新情報を得ることができます。

もう一度検索