モスクワ放送交響楽団

モスクワ放送交響楽団は、ロシアの首都モスクワを本拠地とするオーケストラです。現在は、「P・I・チャイコフスキー記念大交響楽団」という正式名称で知られています。このオーケストラは、長年にわたりロシア音楽の伝統を担い、世界中の音楽ファンを魅了してきました。

歴史

1930年、ソビエト連邦の全国ラジオ放送のために設立されたのが始まりです。当初は「モスクワ・ラジオ交響楽団」という名称でした。その後、ソ連時代には「全ソビエト連邦ラジオ放送連盟交響楽団」（1930年 - 1958年）、「全ソビエト連邦ラジオ・中央テレビ放送交響楽団」（1958年 - 1991年）と名称を変えています。1993年からは一時的に「ロシア交響楽団」という名称が用いられました。

ソビエト連邦崩壊後、チャイコフスキーの音楽演奏における貢献が評価され、現在の「チャイコフスキー記念大交響楽団」という名称になりました。日本においては、改称前後を問わず「モスクワ放送交響楽団」という名称が慣例的に用いられていますが、英語名である「チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ」と呼ばれることもあります。

音楽監督

長年にわたり、数々の著名な音楽監督がオーケストラの発展に貢献してきました。

1930年 - 1937年：アレクサンドル・オルロフ
1937年 - 1953年：ニコライ・ゴロヴァーノフ
1953年 - 1961年：アレクサンドル・ガウク
1961年 - 1974年：ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
1974年 - 現在：ウラジーミル・フェドセーエフ

特に、1972年から長期間にわたり音楽監督を務めるウラジーミル・フェドセーエフは、オーケストラのサウンドを大きく変革しました。前任のロジェストヴェンスキーが築いたグローバルなサウンドから、ロシアの土の香りを色濃く残した音楽へと回帰させ、力強い響きと洗練された表現力を両立させたのです。フェドセーエフの指導の下、オーケストラは更なる高みへと昇り、世界中で高い評価を得ています。

サウンドの特徴

モスクワ放送交響楽団（チャイコフスキー記念大交響楽団）のサウンドは、ロシア音楽特有の情感と力強さを兼ね備えていると言えるでしょう。特に、チャイコフスキーをはじめとするロシア人作曲家の作品の演奏においては、その深い理解と共感が感じられます。また、フェドセーエフの音楽監督就任以降は、洗練された表現力が加わり、より多彩なレパートリーに対応できるオーケストラへと進化を遂げています。

このオーケストラは、長年の歴史の中で培われた伝統と、常に新しい音楽への挑戦を続ける進取の精神を併せ持っています。それゆえに、世界中の音楽ファンから愛され、尊敬を集めているのです。今後の活躍にも目が離せません。

参考文献：

『最新 世界のオーケストラ名鑑387』音楽之友社〈ONTOMO MOOK〉、2009年6月。ISBN 978-4-276-96188-3
上地 隆裕著『世界の[オーケストラ]下 ～英、露、パン・ヨーロピアン 編～』株式会社 芸術現代社、2017年。ISBN 978-4-87463-207-9

外部リンク：

Tchaikovsky Symphony Orchestra - 公式ウェブサイト

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