ウラジーミル・フェドセーエフ

ウラジミール・イヴァノヴィチ・フェドセーエフ

ウラジミール・イヴァノヴィチ・フェドセーエフ（Vladimir Ivanovich Fedoseyev、1932年8月5日 - ）は、ロシアを代表する指揮者です。彼は特にモスクワ放送交響楽団との長年の協力関係で知られており、同楽団の音楽監督・首席指揮者として、そのサウンドを磨き上げ、国際的な評価を高めてきました。

生い立ちとキャリア

フェドセーエフはレニングラード（現在のサンクトペテルブルク）で生まれ、ムソルグスキー学校、グネーシン音楽大学、モスクワ音楽院で音楽を学びました。1971年、エフゲニー・ムラヴィンスキーの推薦により、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団に客演指揮者としてデビュー。その後、ロシア放送民族楽器オーケストラの芸術監督を経て、1974年にモスクワ放送交響楽団の音楽監督・首席指揮者に就任しました。以来、同楽団をロシア有数のオーケストラに育て上げ、現在も良好な関係を維持しています。

国際的な活躍

フェドセーエフは、モスクワ放送交響楽団との活動に加え、バイエルン放送交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、ハンブルク歌劇場管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、NHK交響楽団、フランス国立管弦楽団など、数多くの著名なオーケストラと共演しています。また、イタリア、スイス、イギリス、スカンディナヴィア、アメリカなど、世界各地で客演を重ねています。1995年から東京フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者、1997年から2005年までウィーン交響楽団の首席指揮者を務めました。

オペラ指揮者としても活躍しており、キーロフ劇場、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、フィレンツェ5月音楽祭、ローマ歌劇場、モスクワ・ボリショイ劇場などの主要な歌劇場や音楽祭で、自ら演出を手がけることもあります。

音楽性とレパートリー

フェドセーエフは、個性的な指揮者が多いロシア系の中でも、音楽に奉仕し、作品そのものに語らせるタイプの指揮者として知られています。彼は、リズムや色彩感を強調するよりも、旋律線の流れを重視します。レパートリーは非常に幅広く、ラフマニノフやフレンニコフなどの録音でも作品との相性の良さを示していますが、特にチャイコフスキー、ボロディン、ショスタコーヴィチの解釈で高く評価されています。ゲオルギー・スヴィリードフやボリス・チャイコフスキーとも親交が深かったことでも知られています。

演奏活動におけるメッセージ性

フェドセーエフの演奏活動は、常に強いメッセージ性を帯びています。例えば、リトアニアで独立運動が高まっていた1989年12月には、リトアニアの作曲家チュルリョーニスの作品をモスクワで録音しました。また、ソビエト連邦の崩壊・クーデター直前には、団員を説得してショスタコーヴィチの『森の歌』を録音。クーデター当日には、戦車が包囲する放送局の中で、ショスタコーヴィチの交響曲第5番の第4楽章を録音するというエピソードも残っています。

自筆譜へのこだわり

フェドセーエフは、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』の第4楽章を「アンダンテ」にするなど、自筆譜に基づいた演奏・録音を数度にわたって行っています。また、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を初版に基づいて録音したり、チュルリョーニスの交響詩『海』を繰り返し録音・演奏するなど、作品に対する深い探求心とこだわりを持っています。

来日公演

モスクワ放送交響楽団を率いての来日公演では、正規のプログラムに加え、アンコールも非常に充実しており、聴衆から高い評価を得ています。

受賞歴

ソ連邦人民芸術家
グリンカ賞
モスクワ知事賞
シルヴァー・クロス章
ゴールデン・オルフェウス大賞

外部リンク

http://www.fedoseyev.com/

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