モスルダム

モスルダム：イラク最大のダムが抱える危険性

モスルダムは、イラク北部にある同国最大のダムであり、地域の電力供給において重要な役割を果たしています。しかし、その建設以来、構造的な問題が指摘されており、近年では特に決壊の危険性が懸念されています。

ダムの概要

モスルダムは、チグリス川に建設された多目的ダムであり、主な目的は以下の通りです。

電力の供給
灌漑用水の確保
* 洪水調節

ダムの規模は非常に大きく、貯水容量も膨大です。それだけに、万が一決壊した場合の影響は計り知れません。

決壊の危険性

モスルダムの最大の問題点は、その基礎部分にあります。ダムの基礎は、水に溶けやすい石膏質の地盤の上に建設されており、水の浸食によって空洞が生じやすいという構造的な欠陥を抱えています。そのため、建設当初からグラウト注入と呼ばれる補強工事が継続的に行われてきました。

しかし、グラウト注入は恒久的な解決策ではなく、地盤の浸食は徐々に進行しています。アメリカ陸軍工兵司令部は、2006年にモスルダムを決壊の危険性が高いダムとして警告し、世界で最も危険なダムの一つであると指摘しました。

ISILによる占拠とその後

2014年には、過激派組織ISIL（イスラム国）がモスルダムを一時占拠しました。ISILはダムの管理を掌握し、補強工事を中断させたため、ダムの安定性はさらに悪化しました。ISILからの奪還後、補強工事は再開されましたが、地盤の損傷は深刻であり、完全な修復は困難であると考えられています。

想定される被害

もしモスルダムが決壊した場合、下流の地域は壊滅的な被害を受けると予想されています。特に、イラク第二の都市であるモスルは、洪水によって大きな被害を受ける可能性が高いです。また、首都バグダッドも洪水の影響を受けると考えられています。

ダムの決壊によって、数十万人から数百万人が家を失い、食料や水の供給が途絶える可能性があります。さらに、医療体制の崩壊や感染症の蔓延なども懸念されます。

現在の状況と対策

現在、イラク政府は国際的な支援を受けながら、モスルダムの補強工事を続けています。しかし、専門家の中には、もはや補強工事だけではダムの安全性を確保できないと指摘する人もいます。抜本的な対策としては、ダムの解体や移設などが考えられますが、実現は非常に困難です。

モスルダムの決壊は、イラクだけでなく、国際社会全体にとって大きな脅威となります。早急な対策が求められています。

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