モトゥル・デ・サン・ホセ

モトゥル・デ・サン・ホセの概要

モトゥル・デ・サン・ホセは、グアテマラのペテン県中央に位置し、ペテン・イツァ湖北岸近くにある古代マヤの遺跡です。この遺跡は、その特異な土器のスタイルであるイク様式で特に知られていますが、歴史的な詳細や文化的な意義についてはまだ多くの謎が残っています。

名前の意味と歴史

「モトゥル」という名称の意味は科学的には未解明ですが、同様の名前のマヤ地名は他にも存在します。特に、ユカタン州にも「モトゥル」と名付けられた地域があり、古典的なティカルの名前である「ムトゥル」または「ムタル」との関連も示唆されています。古典期にはモトゥル・デ・サン・ホセは「イク」（風）と呼ばれていたことが、紋章文字によって確認されています。これによって、遺跡が多くの歴史的な文脈において重要な地点であったことが分かります。

遺跡の構成と発見された石碑

モトゥル・デ・サン・ホセには、現存する4つの石碑と部分的な石碑の断片があり、これらは古代の文化の証として重要な役割を果たしています。しかし、保存状態はあまり良好ではなく、出土した土器の大半はその出所が不明であり、正確な時代の特定が困難です。このため、遺跡の全体的な歴史には多くの不確実性がつきまとっています。石碑に古代マヤ語で見られる「イツァ」という単語は、特に注目すべき点です。カネク（またはチャネク）王の名前が確認できる石碑もあり、これがイツァ族と結びついていることが分かります。

王朝の成立と変遷

モトゥル・デ・サン・ホセには、古典期の初期から王政が存在したことが示唆されています。最初に特定される王は、石碑4に記載のあるキニチ王であり、彼の時代は682年頃とされています。これ以降、9人の王の名前が確認され、その中には741年にマチャキラーの捕虜となった王や、745年にドス・ピラスの捕虜となった王が含まれています。特に711年には、モトゥル・デ・サン・ホセが再興したティカルのハサウ・チャン・カウィール1世に従属していたことが記録されており、地域の政治的なダイナミズムを示しています。8世紀後半には、周囲の都市、特にヤシュチランからの攻撃に直面し、状況が悪化していったことも伺えます。

発掘調査と現在の状況

モトゥル・デ・サン・ホセの調査は1895年にテオベルト・マーラーが実施されて以来、1998年からはウィリアムズ大学のアントニア・フォイアスとフロリダ博物館のキティー・エメリーによる発掘調査が行われています。この発掘により、マヤ文化における重要な情報が収集され、新たな発見が期待されています。

遺跡に残された情報とそれに対する調査は、今後の古代マヤの政治や文化の理解を深める大いなる鍵となるでしょう。モトゥル・デ・サン・ホセは、前人未到の領域であり、学問的な発見が進むことが期待される場所です。

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