モプラ望遠鏡

モプラ望遠鏡は、オーストラリア国立望遠鏡機構（ATNF）が運用する、直径22メートルの電波望遠鏡です。ニューサウスウェールズ州のクーナバラブラン近郊に位置しており、その名前は建設地近くにある「モプラロック」という奇岩に由来しています。周辺にはサイディング・スプリング天文台も立地しており、天体観測に適した場所であることがわかります。

モプラ望遠鏡は、主にミリ波帯の電波を観測するために設計されています。オーストラリア国内にある他の電波望遠鏡、例えばオーストラリアコンパクト電波干渉計（ATCA）や直径64メートルのパークス天文台などと連携することで、超長基線電波干渉計（VLBI）として、より高精度な観測を行うことが可能です。これにより、遠く離れた天体の微細な構造や、宇宙における電波源の位置を正確に測定することができます。

特に、モプラ望遠鏡に搭載されているモプラ分光計（MOPS）は、一度に8GHzの帯域を観測することができる高性能な装置です。この分光計には、8GHzの帯域の中から自由に16個の138MHz帯域を選択できるズームモードが搭載されており、これにより非常に高い周波数分解能での観測が可能になっています。ズームモードを用いることで、特定の周波数帯域を詳細に調べることができ、天体から放射される電波のスペクトルを分析する上で非常に重要な役割を果たします。

モプラ望遠鏡の受信機は、主に波長3ミリメートル（周波数75-115 GHz）の電波を観測する能力を持っています。これに加えて、波長7ミリメートルと12ミリメートルの電波を観測できる受信機も搭載しており、多様な周波数帯域での観測に対応可能です。これらの受信機を組み合わせることで、様々な天体現象を多角的に研究することができます。

2006年以前は、観測者が直接モプラ望遠鏡の場所に出向いて望遠鏡の操作や観測を行っていました。しかし、2006年の冬からは、オーストラリアコンパクト干渉計（ATCA）の観測施設から遠隔操作を行う方式に変更されました。これにより、観測者はより快適な環境で、効率的に観測を進めることができるようになりました。また、遠隔操作によって、複数の観測者による共同観測も容易に行えるようになりました。

モプラ望遠鏡は、ミリ波帯での観測を通して、星の誕生や進化、銀河の形成など、宇宙の様々な現象の研究に貢献しています。特に、モプラ分光計による高分解能観測は、分子雲の組成や運動を調べる上で非常に重要であり、宇宙における化学進化の理解を深める上で欠かせないものです。また、超長基線電波干渉計としての利用は、遠方銀河や活動銀河核の構造を明らかにする上で重要な役割を果たしています。

モプラ望遠鏡は、これからも天文学の進歩に貢献する重要な観測施設として、世界中の研究者に利用され続けることでしょう。

外部リンク:
モプラ望遠鏡公式ウェブサイト（英語）

もう一度検索