モランディ橋

モランディ橋：崩落事故と再建、そして残された課題

モランディ橋、正式名称ポルチェーヴェラ高架橋は、イタリア・リグーリア州ジェノヴァの高速道路A10に位置していました。この橋は、その設計者であるリッカルド・モランディにちなんで名付けられました。

歴史

1959年、A7号線と建設中のA10号線を接続する高架橋の設計コンペが開始されました。建設予定地は人家や倉庫、鉄道ヤードが密集し、工事の余地が少ない難所でした。

最終的に、モランディによるプレストレスト・コンクリート製の斜張橋と高架橋を組み合わせた設計が採用され、1963年に建設が始まり、1967年に供用を開始しました。橋の高さは90m、路面までは45mでした。

半世紀にわたりA10号線の一部として利用されましたが、2010年代に入ると老朽化が指摘されるようになりました。交通量の増加も重なり、特にA7号線との接続部分の構造的な問題から、慢性的な交通渋滞が発生していました。大規模な調査と改修計画が立案されましたが、2018年に崩落事故が発生し、多くの人命が失われました。

崩落事故

2018年8月14日、激しい雷雨の中、橋の西側主塔を中心に210メートルにわたって崩落しました。落雷が直接的な原因とする説もありますが、30台以上の自動車と数台のトラックが巻き込まれました。

崩落地点の下にはポルチェーヴェラ川が流れ、工業地域がありました。崩落した橋の一部は川に落下し、残りの部分は鉄道線路や工場の倉庫に落下しました。幸い、事故当日は祝日の前夜祭であったため、倉庫に人はいませんでした。

事故の初期段階では、構造上の弱さが大規模な崩落を引き起こしたと考えられました。当時、道路基礎の強化を含む補修工事中であったことも判明しています。この事故は、コリエーレ・デラ・セラ紙によれば、2013年以来11回目の橋崩落事故でした。

犠牲者

崩落事故により、43名が死亡し、多数の負傷者が出ました。犠牲者には、イタリア人、フランス人、チリ人など、様々な国籍の人々が含まれていました。元サッカー選手のダヴィデ・カペッロは、車ごと落下しましたが、奇跡的に無傷で脱出しました。

崩落を免れた橋の下には住宅があり、避難区域となりました。救助隊は瓦礫の下から生存者を捜索しましたが、最終的に行方不明者全員が遺体で発見されました。残った橋の主塔が倒壊する危険性があったため、周辺住民は避難を余儀なくされました。

その後：再建と新たな橋

2018年12月、ジェノヴァ出身の建築家レンゾ・ピアノの設計による新しい橋「ポンテ・ペル・ジェノヴァ」の建設が決定しました。2019年6月には残存部分が爆破撤去され、架橋工事が開始されました。2020年4月に架橋が完了し、同年8月に「ジェノヴァ・サン・ジョルジョ橋」と命名され、再開通しました。

イタリア国内の橋梁事故

世界金融危機以降、道路への投資が減少する中、イタリアでは2013年から2018年の間に5件の高架橋崩落事故が発生しています。2016年にはレッコ県で、2017年にはアンコーナ近郊で高架橋が崩落し、死傷者が出ています。これらの事故は、インフラの老朽化とメンテナンス不足が深刻な問題であることを示唆しています。

モランディ橋の崩落事故は、イタリアだけでなく世界中のインフラ管理に警鐘を鳴らす出来事となりました。安全性と持続可能性を両立させるための、継続的な投資と技術革新が不可欠です。

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