モンゴルの国章

モンゴル国の国章は、1992年に「モンゴル人民共和国」から「モンゴル国」への国号変更に伴い制定されました。この国章は、モンゴルの歴史、文化、そして精神性を深く象徴するデザインとなっています。

国章のデザインと象徴

国章は、円形の文様「tumen nusan」で囲まれています。この文様は永遠を象徴し、その内側の青地はモンゴル人が崇拝する広大な空を表しています。青地の上部には仏教の三宝を象徴する三つの宝石「chandmani」が配置され、過去、現在、未来の三つの時制をも意味します。

中央には、モンゴルを象徴する「ソヨンボ」と、風の中を走る馬「ヒーモリ」が描かれています。ソヨンボは、モンゴル文字の一つであり、国旗にも用いられる重要なシンボルです。

ソヨンボは以下の要素で構成されています。

火: 富と成功の象徴であり、炎の三つの舌は過去、現在、未来を意味します。
太陽と月: 父なる天（テングリ）への崇拝と、モンゴル民族の起源を表します。
二つの三角形: 矢じりや槍の先を表し、内外の敵を倒す意志を示します。
二つの横棒: 円よりも安定した形であり、モンゴル人がいかなる時も正直さと正義を持つことを表します。
二匹の魚: 太極を意味し、陰陽の調和を表します。社会主義時代には、警戒を怠らないことの象徴と解釈されていました。
二本の縦棒: 砦の壁を意味し、統一と強さを象徴します。モンゴルのことわざ「二人の友情は石の壁よりも強い」に由来します。

ソヨンボと組み合わさった「ヒーモリ」は、幸運と魂を象徴する風の馬で、モンゴルの独立、主権、そして精神を表しています。

国章の下部には緑色の山並みが描かれ、中央には法輪があります。山並みから法輪には、青いハダク（スカーフ）がかけられ、崇敬の象徴である法輪と、親しい人や尊敬する人に渡すハダクによって、敬意を表しています。また、国章の最下部には白い蓮の花が描かれています。

過去の国章

1960年から1992年までのモンゴル人民共和国時代には、社会主義的なシンボルを多く用いた国章が採用されていました。現在の国章と同様の形状を持ちますが、内容は大きく異なり、社会主義のシンボルが多用されています。

例えば、「風の馬」の代わりに、馬に乗った人物が描かれ、背景には白い雪をかぶった山から太陽が昇る様子が描かれています。国章の下部には、法輪ではなく産業を象徴する歯車が描かれ、周りには農業を意味する麦の穂が描かれています。また、上部には赤い星が輝き、社会主義的に修正されたソヨンボがあしらわれています。さらに、国章の下には、赤と青の帯とモンゴル人民共和国の略称「БНМАУ」が記されていました。

1960年以前の国章は、社会主義的な要素が少なく、馬に乗った人物が投げ縄用の棒を持ち、両側には家畜の頭が描かれていました。この時期の国章では、リボンに国名の略称がキリル文字または伝統的なモンゴル文字で書かれていました。

まとめ

モンゴル国の国章は、単なる紋章以上の意味を持ちます。それは、モンゴルの歴史、文化、そして国民の精神を象徴するものであり、社会の変化とともにそのデザインも変遷してきました。現在の国章は、伝統と現代性が融合した、モンゴル国民の誇りを表すシンボルとなっています。

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