モンゴル科学技術大学

モンゴル科学技術大学（Mongolian University of Science and Technology）は、モンゴル国の首都ウランバートル市に本部を置く国立大学です。モンゴル語での正式名称はШинжлэх Ухаан Технологийн Их Сургуульといいます。1959年に創立され、モンゴルにおける科学技術分野の高等教育と研究を牽引する中心的な存在として長い歴史を持っています。本部キャンパスはウランバートル市スフバートル区ハガに位置しています。

沿革

この大学は、1959年に「モンゴル技術大学」としてその歩みを始めました。建国間もないモンゴルの産業基盤構築を支える技術者育成を使命として設立されたと考えられます。その後、モンゴル社会の発展と学術領域の拡大に伴い、大学はその教育・研究範囲を技術分野だけでなく、より広範な科学分野にまで広げました。これを受けて、2001年8月には現在の名称である「モンゴル科学技術大学」へと改称され、名実ともにモンゴルの科学技術をリードする総合大学としての地位を確立しました。

教育と研究

モンゴル科学技術大学では、国の発展に不可欠な多岐にわたる専門分野の教育と研究が行われています。主要な学部には、資源開発に関わる地質学や石油工学、鉱山学、国のインフラ整備を担う土木工学や建築工学があります。また、情報化社会やエネルギー需要に対応するコンピュータ科学・経営、電力工学、情報通信工学といった分野も重視されています。基礎科学である数学、生命科学と産業を結ぶ食品・生物工学、製造業の根幹をなす機械工学に加え、グローバルな視点を持つ人材を育てる外国語学や言語教育学部など、幅広い学問領域をカバーしています。これらの多様なプログラムを通じて、将来のモンゴル社会を支える専門家や研究者を育成しています。

キャンパスと施設

大学の本部キャンパスはウランバートル市に位置していますが、教育機会を全国に広げるため、地方にもキャンパスを展開しています。ウブルハンガイ校はその代表的な例です。これらのキャンパスに加え、特徴的な付属施設として、モンゴル科学技術大学付属高専があります。

日本との連携：付属高等専門学校

モンゴル科学技術大学付属高専は、日本の高等専門学校（高専）制度をモデルとしたユニークな教育機関です。この高専の設立は、両国の教育交流の歴史と深く結びついています。1990年代以降、モンゴルからは多くの若者が日本の高専に留学し、実践的な技術教育を受けてきました。その卒業生の中には、母国に戻り、産業界や行政の要職に就いた人物も少なくありません。例えば、日本の仙台電波工業高等専門学校を卒業し、後にモンゴルの文部科学大臣を務めた人物もいます。このような成功事例が、モンゴル国内において、実践的な技術者教育を行う日本の高専教育システムに対する高い評価と導入への強い関心を生み出しました。

この機運を受け、日本側でも支援の動きが活発化しました。2009年には日本の高専関係者らが中心となり、「モンゴルに日本式高専を創る支援の会」が組織され、具体的な設立に向けた協力が進められました。そして、2014年、ついにモンゴル科学技術大学の付属機関として、日本式の高等専門学校が開校しました。

付属高専の教育課程は、基本的に日本の高専の教育カリキュラムを基本としており、理論と実践を組み合わせた5年一貫の技術者養成教育を行っています。特に、グローバルな舞台で活躍できる人材を育成するため、専門分野の教育と並行して日本語教育にも力が入れられています。卒業生は、身につけた専門技術と高い日本語能力を武器に、日本国内の企業への就職を選択する者、あるいはさらなる高度な知識・技術を習得するために日本の高等専門学校の専攻科や大学へ編入学・留学する者など、多様な進路を実現しています。このように、付属高専は、モンゴルの産業人材育成に貢献すると同時に、日本との教育・技術交流の架け橋となっています。

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