モンタージュ

モンタージュの技法とその歴史

モンタージュ（montage）とは、映画製作における重要な技法であり、異なる視点から撮影された複数のカットを組み合わせて物語を構築する方法です。この言葉の起源はフランス語の「組み立て」を指し、映画の編集プロセスの基盤となっています。この技法が持つ独自の効果は、映画の初期から認知されており、ストーリーをより深く伝えるための強力な手段となっています。

映画初期のモンタージュの基礎

映画の歴史において、モンタージュによる新たな意味を生む技術が早くから存在しました。1895年に発表された米国エジソン社の『メアリー女王の処刑 (The Execution of Mary Stuart)』は、カメラの停止を繰り返す「中止め」を利用し、ショッキングな首切りシーンを実現しました。また、映画の先駆者であるジョルジュ・メリエスは、編集を駆使して様々な視覚的トリックを試み、その代表作に『月世界旅行 (Le voyage dans la Lune)』のコマ撮りアニメーションがあることでも知られています。

モンタージュの二大派閥

モンタージュ技法は、後に純丘曜彰によって二つの主要な流派に分類されます。一つはソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインに代表されるエイゼンシュテイン・モンタージュで、もう一つは米国のD・W・グリフィスによるグリフィス・モンタージュです。

エイゼンシュテイン・モンタージュは、フェルディナン・ド・ソシュールの構造主義から影響を受け、映像を通じて台本の言語的要素を表現する手法として知られています。特に彼の映画『戦艦ポチョムキン』に見られる「オデッサの階段」のシーンがその典型例です。

一方でグリフィス・モンタージュは、ジークムント・フロイトの理論を背景に、俳優たちの感情を引き出すために異なるアングルからの同時撮影を行い、それらを線形に編集する手法です。グリフィスの映画『イントレランス』のスペクタクルシーンがその始まりと言われています。

エイゼンシュテイン・モンタージュとグリフィス・モンタージュの影響

エイゼンシュテイン・モンタージュは、共産主義の観点から質的弁証法を映画編集に応用し、ソ連やフランス、日本の映画界でも主流となりました。小津安二郎が『東京物語』で用いたカット・バックはその一例です。また、日本のアニメにおいてもエイゼンシュテインの影響が見受けられます。

対照的にグリフィス・モンタージュは、当初は多くの予算が必要とされ敬遠されていましたが、黒澤明の『七人の侍』の戦闘シーンがその威力を示しました。テレビ技術が未発達だった期間は、一部で同時撮影とスイッチングによる編集が行われ、後にスタニスラフスキーの演出論がアメリカでの映画製作に多大な影響を与えました。

今ではフランシス・フォード・コッポラはエイゼンシュテインのスタイルを好んで用いる一方で、スティーヴン・スピルバーグなどの次世代脚本家は黒澤の影響を受けてグリフィス・モンタージュを多用しています。そして、デジタル撮影の普及により、これらの手法は現代ハリウッドにおける標準的な編集手法になっています。

日本映画における影響と発展

中条省平が指摘するように、リズミカルなモンタージュが大正末期の日本映画において特に注目され、乱用される傾向がありました。時代劇の中では、フラッシュバックを多用した「チャンバラ・モンタージュ」が流行し、新しい視覚表現の可能性を広げました。

このように、モンタージュの技法は映画製作において不可欠な要素となり、歴史的背景や影響を受けながら、今日に至るまで進化を続けています。

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