モーシェ・ダヤン

モーシェ・ダヤン：イスラエルの英雄、その生涯と軌跡

モーシェ・ダヤン（Moshe Dayan, 1915年5月20日 - 1981年10月16日）は、イスラエルの軍人、政治家であり、同国の歴史において重要な役割を果たした人物です。彼は、第4代イスラエル国防軍参謀総長、第4代農業農村開発大臣、第5代国防大臣、第4代外務大臣を歴任しました。

生い立ちと初期の活動

ダヤンは、当時オスマン帝国領だったパレスチナのキブツ・デガニア・アレフで生まれました。父シュムエル・ダヤンはシオニスト運動家で、息子の名前は同志モーシェ・バルスキーに因んで命名されました。14歳で初期のハガナーに参加し、1938年にはユダヤ臨時徴募警察に入隊、パレスチナ独立戦争に参加しました。彼は、イギリスのシオニズム支持の将校オード・ウィンゲートから軍事教練を受け、多大な影響を受けました。

第二次世界大戦での負傷と「片目のダヤン」

第二次世界大戦勃発後、ダヤンはイギリス軍と共に連合国軍の一員として参戦しました。1941年6月7日、シリアでの戦闘中に敵の銃弾が双眼鏡を直撃し、左目を失明しました。この負傷により、彼はトレードマークとなる眼帯を着用するようになり、「片目のダヤン」として広く知られるようになりました。この出来事は、彼の軍人としての象徴となり、その後の活躍を語る上で欠かせないエピソードとなっています。

軍司令官としての活躍

1948年のイスラエル建国に伴い勃発した第一次中東戦争では、ダヤンはヨルダン渓谷の防衛を指揮し、イスラエルの勝利に大きく貢献しました。1953年には参謀総長に就任し、1956年の第二次中東戦争でもその手腕を発揮しました。

政治家としてのキャリア

1958年に参謀総長を退任後、ダヤンは政界に転身し、1959年にはイスラエル労働党から国会議員に選出されました。その後、農業大臣に就任しました。1967年の第三次中東戦争直前には国防大臣に任命され、1973年の第四次中東戦争でも国防大臣として戦争指導にあたりましたが、準備不足を批判され辞任しました。後に労働党を離れ、メナヘム・ベギン政権下で外務大臣を務めましたが、意見対立から辞任しました。

晩年と遺産

政界を退いたダヤンは、新党「国家刷新運動」を結成し、1981年のクネセト総選挙で2議席を獲得しました。しかし、健康を害し、総選挙直後に心臓発作で亡くなりました。

モーシェ・ダヤンの生涯は、イスラエルという国家の誕生と発展の歴史と深く結びついています。彼の軍事的才能と政治的手腕は、数々の戦争で重要な役割を果たし、イスラエルの安全保障に大きく貢献しました。一方で、彼の決断や行動は、しばしば論争の的ともなり、その功績は複雑な評価を受けています。しかし、彼の存在は、イスラエル現代史において、揺るぎない足跡を残したと言えるでしょう。

著書と関連書籍

『栄光の砂漠 シナイ作戦日誌』（1967年）
『イスラエルの鷹 モシェ・ダヤン自伝』（1978年）
『中東和平交渉―キャンプ・デービッドへの道』（1983年）
ルース・ダヤン『ダヤンへの愛と別れ―“片目の英雄”と過した36年』（1974年）
シャブタイ・テベット『ダヤン―その勝利と財北の記録』（1974年）

関連項目

レヴィ・エシュコル
第三次中東戦争
第四次中東戦争
* オード・ウィンゲート

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