モーラ・リンパニー

デイム・モーラ・リンパニー(1915年8月18日-2005年3月28日)は、20世紀を代表するイギリスのピアニストです。コーンウォールでメアリ・ジョンストンとして生まれ、父親は第一次世界大戦に従軍した軍人でした。幼少期から才能豊かな彼女は、母親からピアノの手ほどきを受けます。ベルギーの修道院付属の学校で才能を開花させ、リエージュで音楽教育を受け、その後奨学金を得てロンドンの王立音楽アカデミーへ入学しました。

12歳という若さで、指揮者ベイジル・キャメロンのオーディションを受け、演奏会デビューを飾ります。この時、彼女は芸名として「モーラ・リンパニー」の名を選びました。リンパニーは母親の旧姓Limpennyを変化させたものです。その後、彼女はクララ・シューマンの弟子であったマティルデ・ヴェルネや、パウル・ヴァインガルテンといった巨匠に師事し、研鑽を積みました。

1938年、ウィグモア・ホールでロンドン・デビューを果たし、同年にブリュッセルのイザイ国際コンクールで2位に入賞。第二次世界大戦前にはイギリスで最も人気のあるピアニストの一人となりました。1940年には、アラム・ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲をイギリスで初めて演奏するという快挙も成し遂げています。

私生活では、1944年にコリン・デフリーズと結婚するも1950年に離婚。1951年にはアメリカのテレビ局経営者と再婚し渡米しますが、流産や死産を経験し、1961年に離婚しました。政治家でアマチュア指揮者としても知られたエドワード・ヒースとは親しく、リンパニー自身は彼と結婚したかったと語っていたそうですが、ヒースは生涯独身でした。

戦後、リンパニーの名声はさらに高まり、ヨーロッパ、アメリカ、[カナダ]]、オーストラリア、ニュージーランド、インドなど世界各地で演奏活動を行いました。1970年には乳癌を克服。その後も精力的に活動を続け、1979年にはチャールズ3世(当時皇太子)の前で演奏する栄誉に浴しました。その功績により、1979年にはCBE(大英帝国勲章司令官)、1992年にはデイム]の称号を授与されています。晩年は[[モナコやフランスで過ごし、フランスで生涯を終えました。

日本には1992年に来日し、東京のサントリーホールで演奏会を行いました。この演奏会では、ショパンの24の前奏曲を演奏し、FM-NHKでも放送されました。

リンパニーはロシア音楽をこよなく愛し、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ハチャトゥリアンの作品を数多く演奏しました。特にラフマニノフの作品は十八番であり、ラフマニノフ自身も彼女の演奏を絶賛したと伝えられています。そして、彼女はラフマニノフの前奏曲全曲を世界で初めて録音するという偉業も達成しました。彼女の演奏は、技術的にも音楽的にも高い評価を得ており、現代においても多くの音楽ファンを魅了し続けています。

デイム・モーラ・リンパニーは、卓越した演奏技術と深い音楽性で、音楽史に大きな足跡を残した、真に偉大なピアニストと言えるでしょう。彼女の演奏は、これからも多くの人々に感動と勇気を与え続けることでしょう。

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