モーリス軽装甲車

モーリスCS9軽装甲車：第二次世界大戦の戦場で活躍した小型装甲車

モーリスCS9軽装甲車は、第二次世界大戦期にイギリス陸軍が運用した装輪装甲車です。その車体設計は、モーリス自動車会社製のC9型4x2トラックを基盤としており、鋲接構造の装甲を施した車体に、2名搭乗可能なオープン型の砲塔を備えていました。主武装は、ボーイズ対戦車ライフルとブレン軽機関銃、あるいはヴィッカース機関銃のいずれかを選択可能で、No.19無線装置も搭載していました。

1936年には試作車のテストが行われ、その後、99両が発注され、1938年には配備が完了しました。しかし、その戦闘歴は、主にヨーロッパ戦線と北アフリカ戦線に集中しています。フランスの戦いでは、第12王立騎兵隊に配備された38両が戦闘に参加しましたが、多くが破壊または放棄されました。さらに、北アフリカ戦線では第11軽騎兵隊が30両を受け取っています。

北アフリカの砂漠地帯での運用において、モーリスCS9は砂漠用タイヤを装着したことで、軟弱な砂地でも良好な機動性を発揮したと評価されています。しかしながら、装甲の薄さと搭載火器の火力の不足は、その戦闘能力に大きな制約を課しました。このため、北アフリカ戦線での作戦行動中に、次第に前線から退役していったのです。

モーリスCS9軽装甲車は、第二次世界大戦におけるイギリス軍の装甲車戦力の構成要素の一つとして、その存在感を示しました。しかし、その脆弱な装甲と軽武装は、本格的な戦闘において大きな欠点となり、結果的に短期的な運用に終止符を打つことになったのです。その歴史は、当時のイギリス軍の戦車戦力、そして戦争における装備開発の課題を浮き彫りにする、重要な一例となっています。

設計と性能

モーリスCS9は、トラックベースの装甲車として設計されたこともあり、複雑な機構を必要とせず、製造も比較的容易でした。これは大量生産に向いていたという利点がありましたが、その一方で装甲の厚さや火力の面で制約が生じたと言えるでしょう。オープン型の砲塔は、敵からの攻撃に対して乗員を十分に保護できないという弱点を持っていました。

運用と評価

フランス戦線と北アフリカ戦線での運用経験から、モーリスCS9の装甲と火器の不足は深刻な問題であると認識されました。敵の対戦車兵器や機銃掃射に対して、高い脆弱性を示したのです。良好な機動性を発揮した砂漠地帯においても、決定的な戦果を挙げるには至らなかったことから、より強力な装甲と火器を備えた装甲車の必要性が改めて認識されることとなりました。

歴史的意義

モーリスCS9は、第二次世界大戦におけるイギリス軍の初期の装甲車の代表例であり、その歴史的な意義は戦車の発展や装備の整備における課題を理解する上で重要です。戦間期のイギリス軍は、財政的な制約などから、戦車戦力の充実が遅れていた面もありました。モーリスCS9のような比較的簡素な装甲車はその時代の状況を反映していると言えるでしょう。この経験は、後のより強力な装甲車の開発につながる貴重な教訓となったことは間違いありません。

参考文献

George Forty - World War Two Armoured Fighting Vehicles and Self-Propelled Artillery, Osprey Publishing 1996, ISBN 1-85532-582-9.
wwiivehicles.com

もう一度検索