ヤエザクラ

八重桜（やえざくら）

八重桜とは、花弁が重なって咲く八重咲きのサクラの総称です。特定の品種を指すのではなく、様々な品種が存在します。その多くは、オオシマザクラやヤマザクラなどの種間雑種であるサトザクラ群に属し、ボタンザクラとも呼ばれます。

八重桜の特徴

一般的なサクラ（ソメイヨシノなど）は花弁が5枚の一重咲きですが、八重桜は6枚以上の花弁を持つものを指します。花弁の数によって、半八重咲（6～15枚）、一重・八重咲（5枚と6～10枚が混在）、八重咲（20～70枚）、菊咲（100枚以上）と細かく分類されます。菊咲の中には、花の中からさらに花が現れる段咲きという珍しい咲き方をするものもあります。

開花時期はソメイヨシノより1～2週間ほど遅く、ソメイヨシノが散り始める頃に見頃を迎えます。関東や関西では4月中旬頃が見頃で、比較的開花期間が長いのが特徴です。花は大きめで、花弁が多いため丸くふんわりとした印象を与えます。

また、八重桜の中には、雌しべが葉のような形に変化し、生殖能力を失っている品種があります。これらの品種は、接ぎ木や挿し木でしか増やすことができません。代表的な品種として、イチヨウ、フゲンゾウ、ショウゲツなどがあります。

代表的な品種

数多くの栽培品種が存在し、日本でよく見られるものとしては、以下のものが挙げられます。

ヤエベニシダレ（八重紅枝垂）: エドヒガンに由来する、枝垂れ咲きの八重桜。
カンザン（関山）: オオシマザクラ由来のサトザクラ群に属し、強健さと鑑賞性の高さを兼ね備えています。濃いピンク色の花が特徴です。
イチヨウ（一葉）: サトザクラ群に属し、淡いピンク色の花を咲かせます。花の中心に1本の雌しべが葉化したものがあるのが特徴です。
フゲンゾウ（普賢象）: 室町時代から存在する古い品種で、淡いピンク色の花を咲かせます。花の中心にある2本の雌しべが象の牙に似ていることが名前の由来です。

北海道在住の浅利政俊は、松前藩の頃からあったマツマエハヤザキなどを掛け合わせ、ベニユタカなど100以上の新品種を作出しました。これらの品種は「松前系」と呼ばれています。カンザンをはじめとする八重桜の品種は海外にも贈られ、公園や庭園で観賞されています。また、海外でも日本の八重桜から新たな品種が生まれています。

八重桜の名所

八重桜の名所としては、以下の場所が挙げられます。

北海道: 松前公園
東北: 日本国花苑
関東: 日本花の会結城農場・桜見本園、新宿御苑
関西: 大阪の造幣局（桜の通り抜け）

文化の中の八重桜

八重桜は、古くから春の風物詩として親しまれてきました。伊勢大輔は、「いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」と和歌に詠んでいます。また、平安時代には、女房の装束で五衣に桜色を用いることを「八重桜」と表現していました。

八重桜は、その華やかさで人々の心を魅了し、日本の文化に深く根付いています。

関連項目

桜湯
公益財団法人日本花の会

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