ヤエヤマカンアオイ

ヤエヤマカンアオイ（八重山寒葵）

ヤエヤマカンアオイ（学名: Asarum yaeyamense）は、ウマノスズクサ科に属する独特な常緑多年草で、特に沖縄の西表島に見られる珍しい植物です。この種は大きめのカンアオイ属の中でも特に目を引くもので、その優雅な葉姿と特異な花の形状が特徴です。

特徴

ヤエヤマカンアオイは常緑性多年草で、葉は卵心形で光沢があります。葉の長さは10〜20センチメートル、幅は8〜13センチメートルに達し、先端は尖っています。葉の表面は緑色に輝き、無毛で、雲紋状の斑が入っています。裏面や葉柄には毛が見られない点もこの植物の特異性を示しています。

この植物の花は3月頃に咲きますが、花弁はなく、萼片が結合して円筒状の萼を形成しています。この萼は長さ10〜15ミリメートル、直径は10〜13ミリメートル程度です。基部が膨らみ先端側がくびれた独特の形状で、外側には短毛が生えています。萼の内壁には格子上の隆起が存在し、口環には白色の小板状突起が見られます。花には12個の雄しべと6個の雌しべがあり、雌しべの子房は半下位で、花柱の先には楕円形の柱頭があります。染色体数は2n = 24という特長を持っています。

分布・生育環境

この植物は主に沖縄の西表島に生息し、成長する環境は低地の常緑広葉樹林の林床や、渓流沿いの崖などです。近年の調査では、自生する場所が非常に限られており、2ヶ所のみが確認されていますが、そのうちの1ヶ所では確認ができなくなったという結果も報告されています。また、台湾にも自生する可能性があるとの情報もあります。

保全状況評価

ヤエヤマカンアオイは環境省および沖縄県により絶滅危惧IB類に指定されており、国内希少野生動植物種にも該当します。このため、法律では植物の採集や譲渡が禁止されており、無許可での取引は犯罪となります。生育地の減少や園芸用目的での採取が問題視されているため、さらなる保護活動が求められています。

この植物は、その美しさと希少性から、多くの人々に関心を持たれており、観察や保護の重要性が強調されています。ヤエヤマカンアオイは、地域の生態系の一部であり、その保全は環境を守ることにもつながります。

参考文献

• - 米倉浩司・梶田忠による植物情報
• - Kew Botanical GardenのPlants of the World Online
• - 筑波実験植物園の植物図鑑
• - 西表島植物図鑑

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