ヤグルマソウ

ヤグルマソウ（矢車草）

ヤグルマソウ（学名：Rodgersia podophylla）は、ユキノシタ科ヤグルマソウ属に分類される多年草です。その独特な葉の形状と、生育環境から、古くから人々に親しまれてきました。

特徴

ヤグルマソウの最も顕著な特徴は、根元から生える葉です。これは掌状複葉と呼ばれ、5枚の小葉が手のひらを広げたように配置されます。葉柄は長く、50cmに達することもあります。小葉は倒卵形をしており、先端が3～5つに浅く裂けています。

花期は6月から7月にかけてで、花茎は1mほどの高さに成長します。花茎には短い葉柄を持つ茎葉が数個互い違いに生えます。花は花弁を持たず、花弁のように見えるのは萼裂片です。萼裂片は通常5～7個あり、長さは2～4mm程度。最初は緑白色をしていますが、徐々に白色へと変化します。雄蕊は8～15個あり、長さは3～4mmで直立しています。花柱は2個あり、長さは1.5～2.5mmで、開花時には直立しています。受粉後には、長さ5mmほどの狭卵形の蒴果を実らせます。

分布と生育環境

ヤグルマソウは、北海道西南部、本州、朝鮮半島に分布しています。深山の谷沿いの林床など、湿り気のある場所を好み、しばしば大きな群落を形成します。

栽培

ヤグルマソウは、その独特な葉の形から、観賞用として栽培されることがあります。1887年には、英語の園芸関連文献にも記述が見られるなど、古くから園芸植物としての価値が認められていました。

名称の由来と方言名

和名「ヤグルマソウ」の由来は、その葉の形が、端午の節句の鯉のぼりに添えられる矢車に似ていることに由来します。

日本各地では、ヤグルマソウは様々な方言名で呼ばれています。

イツツバ: 長野県木曾
エヘクー: 安芸国（広島県）
コノテ: 秋田県
ゴハ、五葉: 埼玉県秩父郡、長野県北佐久郡、美濃国（岐阜県）
ゴハソー: 長野県北佐久郡
サルカサ、猿笠: 秋田県、長野県
ヌスビトノカサ: 山形県東置賜郡
ムコカサ: 秋田県
ムコノゴキ: 秋田県 - かつて田植えの日に、ヤグルマソウの葉の上に山盛りの飯を乗せ、新郎（婿）に食べさせる祝いの儀式があったことに由来
ムコノゴシ: 秋田県
ヤッコガサ: 山形県東田川郡
ヤブレガサ: 山形県

朝鮮語では、도깨비부채（tokkaebi-buchae）と呼ばれ、これは「トッケビ（朝鮮の鬼）の扇」という意味です。

英語では、Rodger's bronze leafと呼ばれています。

ヤグルマソウは、その美しい葉の形と、生育環境への適応力から、日本の自然を代表する植物の一つとして、人々に愛されています。

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