ヤコブの梯子 (曖昧さ回避)

ヤコブの梯子（ヤコブのはしご）

「ヤコブの梯子」は、主に旧約聖書の創世記に記されている、族長ヤコブが見た夢に登場する神秘的な梯子または階段を指す言葉です。これは、地上から天へと通じているとされる壮大な架け橋として描かれています。

旧約聖書のエピソード

この言葉の起源は、旧約聖書の創世記28章に遡ります。族長ヤコブが兄エサウの怒りを避けてハランへと旅立つ途中、カナンの地にあるルズという場所で夜を過ごしました。彼は石を枕にして眠りについた時、一つの夢を見ます。その夢の中で、ヤコブは地上から天にまで届く大きな梯子が立てられているのを目にしました。そして、その梯子を神の使いである天使たちが上り下りしており、梯子の頂には主なる神が立っていました。主はヤコブとその子孫にカナンの土地を与えること、そして彼を決して見捨てず、どこへ行っても共にいて必ず故郷へ連れ戻すという約束を与えました。ヤコブは目を覚まし、その場所が神の家であり天国の門であると感じ、枕にした石柱を立てて油を注ぎ、その地を「ベテル」（ヘブライ語で「神の家」の意）と名付けました。この夢に現れた梯子が「ヤコブの梯子」として知られるようになりました。このエピソードは、神と人間との間のつながり、神の守護、そして神の約束を象徴するものと解釈されています。

様々な分野での「ヤコブの梯子」

旧約聖書に登場するこの象徴的な梯子は、後世において、そのイメージや概念に由来して様々なものの別名や愛称としても用いられるようになりました。

薄明光線（はくめいこうせん）

雲の切れ間から太陽の光が地上に向かって放射状に筋となって降り注ぐ現象を指します。これは空気中の微粒子によって光が散乱されること（チンダル現象）で起こるもので、特に日の出や日没時に見られます。この光の筋が、まるで天空から地上へ降りる梯子のように見えることから、「ヤコブの梯子」と呼ばれることがあります。神秘的で美しい自然現象の一つです。

軌道エレベータ（きどうエレベータ）

これは、地上から静止軌道上の宇宙ステーションやカウンターウェイトまで伸びる巨大なケーブルを設置し、これを昇降機で人や物資を輸送しようという壮大な宇宙開発構想です。地上と宇宙を結ぶ文字通りの「梯子」として見立てられ、「ヤコブの梯子」という愛称で呼ばれることがあります。現在の技術ではまだ実現に至っていませんが、未来の宇宙交通手段として研究が続けられています。

特定の玩具（がんぐ）

数枚の木片が布や紐で連結されており、片側の板を倒すと、連鎖的に他の板が順々に倒れていく視覚的に面白い玩具を指します。日本では古くから「パタパタ」「板返し」「団十郎のからくり屏風」など様々な呼び名がありますが、英語圏ではその動きや見た目が梯子が倒れる様子に似ていることから「Jacob's ladder」と呼ばれています。

アルノルト・シェーンベルクの楽曲

20世紀の重要な作曲家であるアルノルト・シェーンベルク（Arnold Schoenberg, 1874-1951）が作曲を試みた、未完のオペラあるいはオラトリオの作品です。旧約聖書のヤコブの梯子の物語を題材としていますが、単なる聖書劇に留まらず、哲学的な思索を反映した大作として構想されました。シェーンベルクはこの作品の作曲中に亡くなり、未完のまま残されました。

関連語句

* ジェイコブス・ラダー (Jacob's Ladder): 「ヤコブの梯子」の英語読みであり、同じものを指したり、これを題材とした作品名（映画など）に用いられたりします。

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