ヤコブを祝福するイサク (ホーファールト・フリンク)

ホーファールト・フリンク「ヤコブを祝福するイサク」

ホーファールト・フリンクは、17世紀オランダ黄金時代に活躍した画家であり、レンブラントの弟子の一人としても知られています。彼の作品の中でも特に有名なのが、1638年に制作された油彩画「ヤコブを祝福するイサク」です。この作品は、旧約聖書に登場するイサクとヤコブの物語を題材としており、現在アムステルダム国立美術館に所蔵されています（目録番号SK-A-110）。

物語の背景

物語は、イサクの息子であるヤコブが、母リベカの助けを借りて、兄エサウから相続権を騙し取る場面を描いています。エサウは、一杯のスープと引き換えにヤコブに相続権を譲ってしまいます。そして、リベカは盲目の父イサクを欺く計画を立てます。ヤコブに山羊の皮を被せ、エサウに成りすまさせるのです。

絵画の描写

絵画には、盲目のイサクが、ヤコブの手を触りながら祝福を与えようとする場面が描かれています。イサクは、ヤコブが差し出した手が山羊の毛皮で覆われていることに気づいていません。リベカは、背後からその様子を不安げに見守っています。フリンクは、光と影を巧みに用いて、登場人物たちの感情や物語の緊張感を表現しています。

レンブラントの影響

この作品の様式は、フリンクが師事したレンブラントの影響を強く受けています。特に、光の描写や人物の心理表現において、レンブラントの作風との共通点が見られます。フリンクは、レンブラントの工房を離れた3年後に本作を完成させました。この頃から、フリンクは独自の画風を確立し始め、肖像画家として成功を収めるようになります。

同時代の作品

17世紀には、「イサクを祝福するヤコブ」という主題は、多くの画家によって描かれました。同時代のスペインの画家、ホセ・デ・リベーラも、フリンクとほぼ同時期に同じ主題の作品を制作しています。これは、当時の人々の聖書への関心の高さを示すものと言えるでしょう。

作品の魅力

「ヤコブを祝福するイサク」は、単なる宗教画としてだけでなく、人間心理の葛藤や家族の愛憎を描いたドラマとしても鑑賞できます。フリンクの卓越した描写力によって、登場人物たちの感情が生き生きと伝わってきます。アムステルダム国立美術館を訪れた際には、ぜひこの作品を鑑賞し、その魅力に触れてみてください。

参考資料

『RIJKSMUSEUM AMSTERDAM 美術館コレクション名品集』、1995年刊行　ISBN 90 6611 234 4
国立プラド美術館『プラド美術館ガイドブック』国立プラド美術館、2009年。ISBN 978-84-8480-189-4。
* アムステルダム国立美術館公式サイト、ホーファールト・フリンク『ヤコブを祝福するイサク』 (英語)

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