ヤコペッティの残酷大陸

ヤコペッティの残酷大陸

『ヤコペッティの残酷大陸』（原題：Addio zio Tom）は、1971年にイタリアで製作された映画です。ドキュメンタリー映画で知られるグァルティエロ・ヤコペッティ監督が、初めて完全な劇映画として手がけた作品となります。一見すると歴史大作のような雰囲気を持っていますが、同時にブラックスプロイテーション映画の一種としても位置づけられることがあります。

概説

本作は、アメリカ合衆国の歴史において最も陰惨な側面の一つである奴隷制度に焦点を当てています。その内容は、あたかも現実を記録したドキュメンタリーフィルムであるかのようなタッチで描かれます。登場する俳優はすべて無名の人々が起用されていますが、数百人に及ぶ黒人エキストラを投入するなど、これまでのヤコペッティ監督作品と比較して格段に大きな規模と製作費が投じられた大作として制作されました。アメリカ国内では、内容の過激さからR指定版とさらに厳しいX指定版が公開され、それぞれ異なるタイトルがつけられましたが、商業的な成功を収めることはできませんでした。

あらすじ

物語は、アフリカ大陸から奴隷船に非人道的に詰め込まれ、過酷な船旅を経てアメリカ大陸へと強制的に連行されてくる黒人たちの姿から始まります。新大陸に到着した彼らが最初に行われるのは、屈辱的な集団消毒です。特にアメリカ南部では、「黒人牧場」と呼ばれる施設が存在し、ここでは黒人女性が性のために売り買いされ、白人たちによる組織的な人身売買が横行していました。

イタリアからこの現実を探訪したジャーナリストの視点を通して描かれるのは、アメリカのまぎれもない現実でした。それは単なる差別という言葉では到底片付けられない、人間性が完全に剥奪された凄惨な状況です。黒人たちには、人権という概念が全く認められていませんでした。ある者は白人による残忍な「黒人狩り」の犠牲となり、またある者は極度の精神的苦痛から自らを傷つける行為を繰り返したり、生存本能から汚物を口にするまでに追い詰められていきます。また、家畜と何ら変わらない扱いを受け、競売にかけられては新たな所有者のもとへ送られていく者もいました。

一方で、こうした非人間的な現実の傍らで、白人たちは優雅で華やかな生活を謳歌しています。しかし、映画はこのような白人たちの社会にも、やがて避けがたい破局が訪れるであろうことを示唆して幕を閉じます。

関連事項

本作は、奴隷制度や人種差別をテーマにした他の作品群と比較・参照されることがあります。具体的には、奴隷船での反乱を描いた『アミスタッド』、奴隷の子孫の歴史をたどるテレビシリーズ『ルーツ』、そして同じく奴隷制下の性的な搾取をテーマにした映画『マンディンゴ』などが挙げられます。

また、日本の前衛芸術家である草間彌生氏が、ビルの屋上でパフォーマンスを行っている映像が作品中に収められていることでも知られています。

外部リンク

グァルティエロ・ヤコペッティについての情報
allcinemaでの情報ページ
KINENOTEでの情報ページ
IMDb（英語）での情報ページ

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