ヤシュ・ジョーハル

ヤシュ・ジョーハル（1929年 9月6日 - 2004年 6月26日）は、インド映画界において多大な影響力を持った著名な映画プロデューサーです。彼は自身が設立した製作会社「ダルマ・プロダクション」を率いて、視覚的に豪華絢爛なセットや、エキゾチックな海外ロケーションを巧みに取り入れつつ、同時にインドの伝統や家族の絆といった普遍的なテーマを深く掘り下げた作品を数多く世に送り出しました。彼の映画製作に対する情熱と独特のスタイルは、後の世代、特に息子であるカラン・ジョーハルへと受け継がれ、インド映画界の発展に寄与しました。

人物

ヤシュ・ジョーハルは、1929年 9月6日、英領インド時代のパンジャーブ州アムリトサルにて、パンジャーブ系の家庭に生を受けました。成長後、映画製作の道を歩み始め、1971年にはインド映画界の巨匠B・R・チョープラーおよびヤシュ・チョープラーの妹であるヒールー・チョープラーと結婚しました。長年にわたり精力的に作品を作り続けた後、2004年6月19日に胸部鬱血を訴え、ムンバイ市内の病院に入院し治療を受けていました。しかし、病状は回復せず、同月26日に惜しまれつつ74歳でこの世を去りました。

キャリア

ヤシュ・ジョーハルの映画界でのキャリアは、作品『Badal』の広報担当およびスチール写真家という役割からスタートしました。その後、サシャダール・ムカルジーの元で働き、『Love in Simla』の製作に関わる機会を得て、映画製作の基礎を学びました。1962年になると、俳優スニール・ダットが立ち上げた製作会社アジャンタ・アーツに加わり、『Mujhe Jeene Do』や『Yeh Rastey Hain Pyar Ke』といった作品の製作管理を担当し、プロデューサーとしての経験を積みました。さらに1965年以降は、ナヴケータン・フィルムズに参加し、『Guide』、『Jewel Thief』、『Prem Pujari』、『Haré Rama Haré Krishna』といった、当時の注目作の製作に貢献し、その手腕が高く評価されるようになりました。

ダルマ・プロダクションの設立と成功

1976年、ヤシュ・ジョーハルは自身の理想を追求すべく、映画製作会社「ダルマ・プロダクション」を設立しました。会社が製作した最初の作品の一つであるラージ・コースラー監督作『Dostana』（1980年）は、批評的にも興行的にも成功を収め、ダルマ・プロダクションの将来を確固たるものとしました。1980年代から1990年代にかけて、彼は『Duniya』、『火の道（Agneepath）』、『Gumrah』、『Duplicate』など、様々なジャンルの作品を精力的にプロデュースしました。これらの作品は、彼が得意とする豪華な映像表現と、登場人物の複雑な感情を描くドラマ性が融合したものでした。また、国際的な視野も持ち、1994年に公開されたハリウッド映画『ジャングル・ブック』ではアソシエイト・プロデューサーとして製作に携わっています。

息子カランとの共同作業と晩年

ヤシュ・ジョーハルのキャリアにおいて、1998年は重要な転機となりました。この年、彼の息子であるカラン・ジョーハルが監督としてデビューし、そのデビュー作『何かが起きてる（Kuch Kuch Hota Hai）』をダルマ・プロダクションが製作したのです。この作品は、インド国内のみならず海外でも絶大な人気を獲得し、批評家からも高く評価される大成功を収めました。その後も、2001年に製作した『家族の四季 -愛すれど遠く離れて-（Kabhi Khushi Kabhie Gham...）』が記録的なヒットとなるなど、息子カランとの協働を通じてダルマ・プロダクションは更なる飛躍を遂げました。また、ジョーハルは後進の育成にも熱心で、1999年にはシャー・ルク・カーンらが設立したドリームズ・アンリミテッド（現在のレッド・チリーズ・エンターテインメント）の立ち上げを支援し、同社が手掛けた『それでも心はインド人（Phir Bhi Dil Hai Hindustani）』の製作にも関与しています。ヤシュ・ジョーハルがプロデューサーとして関わった最後の作品は、2003年に公開された『たとえ明日が来なくても（Kal Ho Naa Ho）』でした。この作品もまた、批評家から絶賛され、興行収入面でも大きな成功を収め、彼の長年にわたる輝かしいプロデュース人生を締めくくる一作となりました。

ヤシュ・ジョーハルは、その卓越したプロデュース能力と、エンターテインメント性と芸術性を両立させた作品作りによって、インド映画界に不朽の功績を残しました。彼が築いたダルマ・プロダクションは、息子カラン・ジョーハルのもとで現在もインドを代表する大手製作会社として多くのヒット作を生み出し続けています。

フィルモグラフィー

ヤシュ・ジョーハルが製作に関わった主な作品は以下の通りです。

Dostana（1980年）
Duniya（1984年）
Muqaddar Ka Faisla（1987年）
火の道（Agneepath, 1990年）
Gumrah（1993年）
Duplicate（1998年）
何かが起きてる（Kuch Kuch Hota Hai, 1998年）
家族の四季 -愛すれど遠く離れて-（Kabhi Khushi Kabhie Gham..., 2001年）
* たとえ明日が来なくても（Kal Ho Naa Ho, 2003年）

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