アムリトサル

アムリトサルは、インド北西部のパンジャーブ州に位置する主要都市の一つです。人口は約100万人を擁し、アムリットサル、アムリッツァーとも表記されます。その名はサンスクリット語で「生命の水の貯水池」を意味し、肥沃な土地に恵まれ、農業が盛んな地域です。また、織物業や化学工業も発展しています。

地理的には、パキスタンのラホールから約50キロメートル東に位置しており、歴史的にも重要な役割を果たしてきました。

歴史

16世紀後半にシク教徒によって建設されたこの都市は、シク教の総本山であるハリマンディル・サーヒブ、通称ゴールデン・テンプル（黄金寺院）を中心に発展しました。1604年に建立されたこの寺院は、19世紀初頭に屋根が金箔で覆われ、その美しい姿から「黄金寺院」として広く知られるようになりました。

しかし、アムリトサルは歴史の中で幾度も悲劇に見舞われています。1919年には、ローラット法への抗議集会に対し、イギリス領インド軍が発砲し多数の市民が犠牲となる「アムリトサル事件」が発生しました。この事件は、インドの独立運動における重要な転換点となりました。

さらに、1984年には、インディラ・ガンディー首相がシク教徒の反政府勢力に対して強硬策をとり、黄金寺院に立てこもったシク教徒が武力鎮圧される「ブルースター作戦（黄金寺院事件）」が実行されました。この事件による多数の死傷者は、その後のインド社会に深い傷跡を残しました。インディラ・ガンディー首相は、この事件への報復として、後にシク教徒のボディガードによって暗殺されています。

産業と交通

アムリトサルは、豊かな農業地帯に位置し、農産物の集積地として重要な役割を果たしています。また、織物業や化学工業も盛んで、経済的に重要な都市となっています。

交通の面では、アムリトサル国際空港（シュリー・グル・ラーム・ダース・ジー国際空港）が市の中心部から北西に約15kmの場所に位置しており、国内外の主要都市を結ぶ路線が就航しています。鉄道は、アムリトサル・ジャンクション駅が中心駅で、インド各地への列車が発着しています。特に、首都デリーやヒンドゥー教の聖地ハリドワールを結ぶ高速列車シャターブディー急行や、各都市へ向かう長距離寝台列車が頻繁に運行されています。また、ムンバイを結ぶ列車の一つには、アムリトサルの象徴的な観光地である黄金寺院にちなんで「ゴールデンテンプルメール」という名前がつけられています。バスは、ジャンクション駅の東側に位置するバスターミナルから発着し、近隣地域への移動手段として利用されています。

アムリトサルは、その歴史と文化、そして産業が複雑に絡み合い、インド社会において重要な位置を占める都市です。黄金寺院は、多くの観光客や巡礼者を魅了するだけでなく、シク教徒にとって精神的な中心地であり続けています。しかし、過去の悲劇を忘れることなく、平和と発展を願う街でもあります。

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