ヤツガタケムグラ

ヤツガタケムグラ（八ガ岳葎）

ヤツガタケムグラ（学名：Galium triflorum）は、アカネ科ヤエムグラ属に分類される多年草です。その名の通り、八ヶ岳で発見されたことに由来し、現在は絶滅危惧種として保護されています。

特徴

草姿: 茎は地を這うように広がり、上部は斜めに立ち上がり、20cmから60cm程度の高さになります。
茎: 4つの稜があり、下向きの小さな刺が生えています。
葉: 通常6枚の葉が輪生します。葉の形は細長い楕円形で、長さは1cmから3cm程度。先端は少し尖っており、裏面の中央脈には下向きの鉤状の毛がまばらに生えています。
花: 7月頃に、茎の先端や葉の付け根から花序を出し、3個前後の小さな花を咲かせます。萼には先が曲がった長毛があり、花冠は直径約2mmで、緑白色をしています。花びらは4つに分かれ、雄しべは4本、子房は2室に分かれています。
果実: 直径1mmから1.5mm程度の分果が2つ合わさったもので、表面には白い鉤状の毛が密生しています。

分布と生育環境

ヤツガタケムグラは、日本では本州の中部地方、特に八ヶ岳や南千島、北海道などの深山の林の中に生育します。生育が確認されている地域は限られており、ごくまれにしか見ることができません。国外では、ヨーロッパ、アメリカの温帯北部から亜寒帯にかけて広く分布しています。

名前について

和名の「ヤツガタケムグラ」は、1907年に植物学者の牧野富太郎博士が八ヶ岳で採集した際に命名されました。「ムグラ」は、草むらや藪を意味します。

種小名の triflorum は、「三つの花」という意味です。

レッドリスト

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧IA類 (CR) に指定されており、ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高いと評価されています。また、群馬県や長野県など、生育地のある都道府県でもレッドデータリストに掲載され、保護の対象となっています。

群馬県: 絶滅危惧IA類（CR）
長野県: 絶滅危惧II類（VU）

保全の重要性

ヤツガタケムグラは、生育地の破壊や環境の変化により、その数を減らしています。自生地における保護活動や、生育環境の保全が重要です。私たちがこの植物の存在を知り、関心を持つことが、保全活動の第一歩となります。

ギャラリー

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参考文献

高橋勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 春』、2002年、山と溪谷社
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
牧野富太郎、「やつがだけむぐら（新稱）」, The botanical magazine 『植物学雑誌』Vol.21, No.249, p.284, (1907)
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）
日本のレッドデータ検索システム
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編（2022年改訂版）」、群馬県立自然史博物館

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