ヤハズソウ

ヤハズソウ（Lespedeza striata）

ヤハズソウは、マメ科ハギ属に分類される一年生の草本植物です。その名前は、葉を引っ張ると矢筈（やはず）の形に千切れることに由来します。

特徴

草姿: 草丈は20cmから50cm程度で、根元から多数の茎を分枝させます。茎は細く硬く、節があり、下向きの毛が生えています。
葉: 三出複葉で、小葉は楕円形をしており、先端は丸みを帯びています。頂小葉がやや大きいのが特徴です。葉の表面はつや消しの緑色で、草のような質感です。葉脈は多数の側脈が平行に走り、光に透かすと矢筈状の模様が浮かび上がります。
花: 7月から9月にかけて、葉腋に小さな赤紫色の花を咲かせます。花は単独で咲くこともあれば、数個がまとまって咲くこともあります。花の大きさは約5mm程度です。
果実: 果実は円形で扁平な節果で、中に種子が1つ入っています。

生育環境と分布

ヤハズソウは、日当たりの良い草地や川原などに生育します。道端などの身近な場所でも見かけることができ、やや湿った場所を好みます。分布域は広く、北海道から琉球列島、国外では中国、台湾、朝鮮半島に分布しています。

分類

ヤハズソウはハギ属に分類されますが、葉の形状が一般的なハギとは異なり、掌状複葉であることから、ヤハズソウ属（Kummerowia）として独立させる分類方法もあります。ヤハズソウ属には、日本には以下の種が含まれます。

マルバヤハズソウ (Lespedeza stipulacea Maxim.): ヤハズソウによく似ていますが、茎に生える毛が上向きであること、葉が倒卵形で茎の先端付近で幅が狭くなることが特徴です。本州から九州、朝鮮半島、中国、ウスリーに分布し、ヤハズソウと混生することもあります。

人間との関わり

ヤハズソウは、特に人間に大きな利益をもたらす植物ではありませんが、道端などの未舗装道路に生えることが多く、その丈夫さから踏みつけにも強いという特徴があります。

また、葉を両側からつまんで引っ張ると、必ず側脈で綺麗に切れるため、矢筈状の切れ端を作って楽しむ草花遊びがあります。

作家の永井荷風は、随筆「矢はずぐさ」の中で、妻がヤハズソウを煎じて薬草として服用していた様子を描いています。

参考文献

佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎他『日本の野生植物　草本II 離弁花類』(1982年、平凡社)

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