ヤマ (インド神話)

ヤマ（Yama）

ヤマはインド神話において、死者の主であり人類の始祖として知られる神です。彼の名はサンスクリット語で「双子」を意味し、古代インド・イランの時代に遡る深い背景を持ちます。ヤマの神話は彼の妹ヤミーとの対話を中心とした作品によって知ることができ、それが人類の起源にまで関連付けられています。

ヤマとその神話的背景

『リグ・ヴェーダ』の第10巻10節では、ヤマとヤミーという双子の兄妹が対話を持つ様子が描かれています。彼らは神ヴィヴァスヴァットの子であり、母親はトヴァシュトリの娘であるサラニューとされています。この作品において、ヤミーは兄のヤマに対して結婚し子孫を残すことの重要性を訴えますが、ヤマは近親婚に対する神々の定めに基づきそれを拒否します。このやり取りは、倫理的な問題を巧みに避けつつ人間の起源について考えさせる内容となっています。

ヤマは人類の始祖として名高い一方で、一般的には死者の主として知られています。彼の神格は、他の神々と並列して位置づけられており、時として人間の祖と見なされるマヌと対になる存在だとも考えられています。

死者の主としてのヤマ

ヤマが死者の主となった経緯は、彼が最初の人間の死者であり、死後の世界を見いだしたことに起因しています。ヤマの死は昼夜の起源ともされ、彼の死後に兄妹であるヤミーが悲しむ様子が神話として伝えられています。神々は、ヤミーがヤマを忘れられるように夜を生み出し、彼女が立ち直る助けをしたとされ、その結果、今日と昨日の概念が生まれたのです。

古代インドの伝承によると、生前に良い行いをした者はヤマの国に至ることができるとされ、その場所は「死者の楽園」と考えられていました。理想的な人生は、死後に祖先の霊と一体となることでした。しかし後に、ヤマの位置付けは変化し、地下の世界で死者を裁く恐るべき存在として描かれるようになりました。

ヤマの象徴と図像

ヤマは通常、青い肌で水牛に跨った姿で表現されます。この青い肌は、彼が本来持っていた黒い肌から美術上の表現として変化したものです。また、神犬サラマーの子孫である2匹の犬、サーラメーヤを従えていることも特徴的です。

近年の研究や解釈においても、ヤマの存在は宗教的、文化的に非常に重要なものであり、彼に関する神話や伝承は今なお多くの人々に影響を与えています。より深く知ることで、ヤマの神話の持つ意味や、彼が果たした役割についての理解が深まることでしょう。

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