ヤマト便

ヤマト便は、かつてヤマト運輸が提供していた特別積合せ貨物サービスの一つです。これは、一般的に広く利用されている宅急便では送れない、より大型の荷物や、複数の荷物をまとめて送る場合、あるいは30万円を超える高額な品物で特別な保険を必要とする場合などに利用されていました。宅急便の上限サイズ（3辺合計160cmかつ重さ25kg）を超える荷物に対応できる点が大きな特徴でした。

サービスの主な特徴

ヤマト便の運賃体系は、個々の荷物のサイズではなく、発送する荷物の総重量に基づいて計算される「総重量制」を採用していました。体積が大きいけれども軽い荷物については、特定の換算率（1才、すなわち27,000立方センチメートルを8kgとして計算）を適用して重量に換算し、実重量と比較して重い方を採用するという仕組みでした。これにより、例えばかさばる家具や複数の段ボールをまとめて送る際に、宅急便よりも割安になるケースがありました。

支払い方法は、発払（発送元払い）と着払（お届け先払い）の両方が選べましたが、荷物に保険をかける場合は注意が必要でした。特に着払いで保険を利用する際には、保険料の発払いが必須であり、かつ現金で支払わなければならないという制約がありました。

サービス利用にあたっては、ヤマト運輸の営業所に荷物を直接持ち込むか、担当のセールスドライバーに集荷を依頼する形でした。発送時に使用する伝票は、発払いが緑色、着払いがピンク色と色分けされており、視覚的にも分かりやすくなっていました。

利用上の利点と制約

ヤマト便は、そのサービスの性質上、宅急便とはいくつか異なる点がありました。

利点:
長物や重量物、複数口を安価に送れる場合がある: 宅急便の上限を超える荷物や、まとめて送る場合に経済的な選択肢となることがありました。

制約:
配達時間の指定ができない: 細かい時間帯を指定して配達を依頼することはできませんでした。
* 配達に日数がかかる場合がある: 宅急便に比べて輸送に時間がかかる可能性があり、特に遠方への配送ではリードタイムが長くなる傾向がありました。通常は1〜2日程度での配達を公称していましたが、状況によってはそれ以上の日数を要することもありました。

なお、ヤマト便とは別のサービスとして、法人や個人事業主向けに、全国翌日配達を可能とする航空便サービスが存在しました。ただし、これはヤマト運輸本体ではなく、関連会社のヤマトグローバルエキスプレスが提供していたサービスでした。ヤマト便自体は、基本的に陸上輸送を主体としていました。

取扱サイズ・重量の変遷

ヤマト便のサービスには、2017年6月19日に取扱可能な荷物のサイズと重量に関する重要な変更がありました。この変更により、1個あたりの実重量が30kgを超えるものや、3辺合計が200cmを超えるもの（ただし、最長辺は170cmまで、天地無用指定の場合は横幅100cmまでという条件付き）は、ヤマト便での発送ができなくなりました。これは、より安全で効率的な輸送体制を構築するための一環でした。

サービスの廃止

そして、ヤマト便は最終的に、2021年10月3日の発送分をもってサービスを終了しました。この廃止の背景には、ヤマト運輸が宅急便のサービス拡充を図ったことがあります。具体的には、それまで宅急便の最大サイズだった160サイズを超える荷物に対応するため、新たに180サイズと200サイズの規格が新設されました。これにより、ヤマト便が担っていた大型荷物の一部が宅急便で送れるようになったため、ヤマト便という独立したサービスの必要性が低下したという経緯があります。ヤマト便の廃止後、大型荷物の発送は主に新設された宅急便の大型サイズや、他の法人向け輸送サービスなどが担うことになりました。

ヤマト便のように、宅急便の規格を超える荷物を複数まとめて送るサービスは、他社でも提供されています。例えば、日本通運の「アロー便」や、佐川急便の「フリーサイズパッケージ便」などが、これに類するサービスとして挙げられます。ヤマト便は、特に個人や小規模事業者が大型荷物などを比較的利用しやすい形で送れるサービスとして、一定の役割を果たしていましたが、宅急便の進化と共にその役目を終えることとなりました。

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