宅急便

宅急便（たっきゅうびん）

宅急便は、ヤマト運輸が提供する宅配便サービスの商標です。黒猫のマーク「クロネコ」がトレードマークとして広く知られています。このサービスは、ヤマトホールディングスの登録商標であり、その歴史は日本の物流業界に大きな影響を与えてきました。

沿革

誕生の背景

1960年代、高速道路の整備が進む中、当時の大和運輸（現ヤマトホールディングス）は長距離輸送で後れを取っていました。オイルショックも重なり、経営危機に瀕していたのです。しかし、1971年に社長に就任した小倉昌男は、従来の「大口貨物の方が効率的」という考え方を覆し、小口貨物の可能性に着目しました。当時、個人が荷物を送る手段は郵便小包か鉄道の小荷物運送しかなく、どちらも不便な状況でした。小倉は、この状況をチャンスと捉え、新たな宅配サービスの開発を決意します。

宅急便の開発

1975年、小倉は「宅急便開発要項」を発表し、若手社員を中心としたワーキンググループが新商品の開発に取り組みました。そして1976年1月23日、「電話一本で集荷」「一個でも家庭へ集荷」「翌日配達」「運賃は安くて明瞭」「荷造りが簡単」というコンセプトの「宅急便」が誕生しました。

サービス開始と普及

サービス開始当初は、「卓球便」と間違えられたり、営業所の看板から動物病院と勘違いされたりするなど、苦労もありました。しかし、その利便性から利用者は急速に増加し、1976年度の取扱個数は想定の8倍以上となる170万個に達しました。この成功を受け、他社も同様のサービスを開始し、宅配便市場は大きく拡大しました。

全国展開と海外進出

その後、宅急便は営業エリアを拡大し、1997年には離島を含む全国展開を完了しました。また、2000年からは台湾への進出を皮切りに、海外展開も開始しました。現在では、東アジアや東南アジアを中心に事業を展開しており、海外では「TA-Q-BIN」という名称で親しまれています。

近年の動向

近年では、インターネット通販の普及により、取扱個数が急増しています。しかし、再配達の増加などから従業員の長時間労働が問題となり、2017年には運賃の値上げやサービス内容の一部変更が行われました。また、2021年には宅急便で扱えるサイズの上限が引き上げられました。2023年6月には、転送時の着払い対応が開始されました。

名称の由来

「宅急便」という名称には、「お宅に急いで届ける宅配便サービス」という意味が込められています。サービス名称の候補には、他にも「ハニーライン」「トゥモローサービス」「クイックサービス」などがありましたが、最終的に「宅急便」が採用されました。

サービスの種類

ヤマト運輸の宅急便には、以下のような様々な種類があります。

• - 宅急便
• - 宅急便コンパクト
• - スキー宅急便
• - ゴルフ宅急便
• - 国際宅急便
• - クール宅急便
• - 国際クール宅急便
• - 空港宅急便
• - 往復宅急便
• - 超速宅急便
• - パソコン宅急便
• - オークション宅急便
• - 宅急便コレクト
• - 宅急便タイムサービス
• - らくらくメルカリ便

これらのサービスは、荷物の種類やサイズ、配送時間などのニーズに合わせて選択できます。

料金

宅急便の料金は、送付先と荷物のサイズ、重量によって決まります。支払いは、現金、各種電子マネー、クレジットカードなどで行えます。以前は回数券も販売されていましたが、現在は取り扱いを終了しています。

利用方法

宅急便の利用方法は、営業所や取扱店への持ち込み、または集荷依頼のいずれかです。取扱店には、コンビニエンスストアも含まれます。

送り状

宅急便の送り状は、複写式で綴りになっています。ヤマト運輸の会員サービス「クロネコメンバーズ」に登録すると、送り状を自宅で印刷したり、営業所の端末で発行したりすることができ、料金の割引が適用されます。

その他のサービス

宅急便には、以下のような便利なサービスもあります。

• - 時間帯お届けサービス
• - 宅急便センター受け取りサービス
• - 複数口減額制度
• - 配達日時変更・不在時コンビニ受け取り

宅急便に関するエピソード

宅急便のロゴには、「急」の文字が急ぎ足のようにデザインされています。また、ヤマト運輸はトレードマークの「ネコ」に大変な愛着があり、情報システムの名称も「NEKO」と名づけられているほどです。

魔女の宅急便との関係

宮崎駿監督のアニメ映画『魔女の宅急便』のタイトルが、ヤマト運輸の商標権に触れるのではないかと話題になったことがあります。しかし、ヤマト運輸が映画のスポンサーになったことで、この問題は解決されました。

関連情報

• - 宅配便
• - ゆうパック (日本郵政)
• - ペリカン便 (日本通運)
• - フクツー宅配便 (福山通運)
• - 飛脚宅配便 (佐川急便)
• - カンガルーミニ便 (西濃運輸)
• - トヨタ・クイックデリバリー
• - 魔女の宅急便

外部リンク

• - ヤマト運輸
• - 個人のお客さま 宅急便 - ヤマト運輸
• - 法人のお客さま 宅急便 - ヤマト運輸
• - 台湾における宅急便事業開始のお知らせ - ヤマト運輸
• - 宅急便（繁体字中国語）

宅急便は、日本の物流を大きく変えたサービスであり、私たちの生活に欠かせない存在となっています。

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